突き進め


ルート、テル、ジュリア、ディーンは、
廊下の奥に、扉を見た。
鍵入れの中の鍵が反応している。
「ルート、これ!」
と、走りながら、テルがルートに鍵を渡す。
ルートは受け取り、奥の扉まで走り、
奥の扉の鍵穴に鍵をさしこみ、まわす。
ガチャリと音がする。
ルートは、ゆっくり鍵を抜き取る。
扉の向こうからは、攻撃のような気配は無い。
ルートはゆっくり扉を開いた。
覗き込もうとすると、ひゅっと風を切る音。
その直後、金属の音がして、ルートは我に返った。
「ルート、油断すんな」
金属の音は、ジュリアが中からの攻撃を受け止めた音。
飛び道具のようなものを落とした音らしい。
部屋の中をのぞく。
おそらく、飛び道具使い…それから、おそらく戦士。
合わせて10人というところ。
「テル、お前は鍵係だ。行け」
ジュリアが促す。
テルがうなずく。
「さぁ、突破口作るよ!」
ジュリアが詠唱を始める。
そして、
「ビッグトルネード!」
次の扉まで、一瞬だけ、隙が生まれる。
「行け!」
ジュリアの声の前に、
ルートとテルは駆け出していた。

ジュリアがため息をつく。
そのジュリアを、飛び道具が襲う。
飛び道具は金属音を立てて落ちた。
ディーンのリューンが、叩き落したのだ。
「…油断、しないでください」
ディーンはジュリアに声をかける。
ジュリアは苦笑いした。
「さぁて、こいつらも召喚されたんだろうね」
「でしょうね」
「やるか」
ジュリアが不敵に笑う。
ディーンも微笑み返した。
ジュリアが魔法の詠唱を始める。
ディーンが飛び道具をはじきつつ、
戦士と飛び道具使いの相手をする。
「いくよ!ギガサイクロン!」
風神の力を継いだ、風魔法が炸裂し、
飛び道具はあらぬ方向へと飛んだ。
あちこちに散らばり、隊列も乱れた。
ジュリアは攻撃態勢に入る。
飛び道具が使えない間、戦士の相手をし、
あわよくばしとめんとする。
ディーンは魔法詠唱をする。
そして、
「ダークメテオ!」
重力をめちゃめちゃにして、
ジュリアの風魔法で破壊したもの、
あるいは彼らの武器防具などが、
大きな黒い塊となって、敵陣営に炸裂する。
ディーンは、深くため息をついた。
相手のほうは、まだいるようだ。
「まだまだいるよ」
「…わかっています。それでも、戦力はそぎたいです」
「ルートとテルは大丈夫かね」
「きっと、大丈夫です」
「だといいね。さ、こっちも生き残ろう」
「はい」
ジュリアとディーンは、おのおのの得物を構え、
敵の中へと突き進んだ。

ルートとテルは、
廊下を走った。
鍵入れの中の鍵が反応する。
「ルート、最後の鍵です」
テルがルートに鍵を渡す。
ルートは鍵を受け取り、
扉の鍵穴に差し込み、まわし、
ガチャリと音を立てた。
少し開いて、覗き込む。
そこには、剣士が一人だけいた。
奥には、扉。
テルが鍵入れをしまい、先に扉に入る。
右手に銃をぶら下げている。
ビナに教わったというものだろう。
「ルート、鍵係の僕の役目は終わりです」
テルは振り向かず、剣士と対峙したまま言う。
「走って、奥まで!」
テルが銃を構え、
剣士が跳躍し、
ルートが奥に向かって走り出す。
同時だった。
テルの銃が雷を吐き出す。
剣士はその剣で雷を避けた。
かなり出来るものらしい。
ルートは、奥の扉から出て行ったようだ。
テルはため息をついた。
「ビナに教わったのは、これだけじゃないんですよ」
テルは、にやりと笑った。
まっすぐ剣士に銃を構える。
剣士は剣を構え、突き進んでする。
「カミカゼヴォルト!」
テルが叫び、まばゆいばかりの雷が放出される。
戦士はそのうちの一つを、まともに食らったらしく、
後方へはじけ飛んだ。
『この世界のものもやるようだな』
テルは理解した、
異世界の言葉ながらも、その意味を。
『この世界は、美しく作り変える』
「美しく…なぜ」
『それが、我らを呼び出したものの願いだからだ』
テルは息を吸い、
「ナンセンスです!」
と、一言叫んだ。
「僕らの世界のことは、僕らが決めます。のこのこ召喚された方に言われたくありません!」
召喚されたであろう剣士は、
多分、笑ったらしい。
『さぁ、戦いを続けよう。どちらかが息の根止まるまで』
「死ぬ気は、毛頭ありませんから」
テルは銃を構えた。

ルートは廊下を走り、
鍵のかかっていない最後の扉を抜け、
…そして、今までとは違う空間に出た。


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