小さな島


パンダの脅威を知らない、
小さな島。
その島に、三毛パンダが襲撃する。
情報をつかんだのは、店長と呼ばれたパンダ頭の男だった。
何万匹の三毛パンダで襲撃させて、
滅ぼし、見せしめにするという。
情報をつかんだパンダ店長は驚愕した。
そして、秘密裏に行動をした。
島のみんなが不安がらないように。
いつものように、パンダ頭のポーカーフェイスで。

この島においては、
パンダといえばパンダ店長だ。
隣人であり、頼れるスクリプト書きであり、
この島の柱の一人といってもよかった。
パンダの脅威を何一つ知らない。
パンダを愛する隣人だと信じて疑わない。
すすけているけれど、幸せな島だ。

店長は島に帰ってきた。
何一つ、手だてを持たないままで。
そして、皆に告げた。
「早くここを離れるんだ。じきに三毛パンダの大軍がやってくる」
島の者に、三毛パンダの説明から、かからなければいけなかったが、
誰一人として、島から出て行くものはなかった。
誰かが言った。

「路人いてこそのクーロンでしょ」

ああ、ここはクーロンだ。
この島は、間違いなくクーロンという島だ。
何百年も前になくなった魔窟と呼ばれた場所が、
こうして、ここに、ある。
時代の流れで消えて行った、クーロン。
そしてまた、クーロンという島が、
時代の流れで、
三毛パンダの大群で消されようとしている。

店長は、それに、否を突きつけたくなった。
店長はパンダだ、人間でもある。
それ以前にクーロンの店長だ。
クーロンを作ったわけでもない。
ただ、クーロンで店をやっているだけに過ぎないかもしれない。
でも、クーロンが滅びることに、
否を突きつけたくなった。

地鳴りが聞こえる。
海に囲まれた島なのに、
地面が鳴っている。
店長は、クーロンの島の、ゲートにやってくる。
その方向から、ご丁寧に大群はやってくるらしい。
クーロンのゲート。
そこからみんな始まって、
そこにみんな集った。

遠くの海に、
白、黒、赤の群れ。
赤は攻撃の色だと誰かが言っていなかったか。
何万匹の三毛パンダが海を渡ってやってくる。
勝ち目は正直ない。
つかまるババ様はいない、なんてことを誰かが考えたかどうか。

ラブパンダが見せしめにするのか、
白黒の敵が見せしめにするのか。
政府も反政府も関係ない。
主義主張なんてくそくらえ。
クーロンに集ったもの、その住民が、
今、絶望的に勝ち目のない戦いをする。

小さな居場所を守るだけの、
小さな力。

奇跡よ起これ。
神はパンダ。


次へ

前へ

インデックスへ戻る