三人にお見舞い
「そろいましたね」
アイビーはいつもの静かな調子で言う。
「仕事は、サボテン治療屋にいくことです」
「サボテン治療屋…」
タムはなんとなく思い出す。
フユシラズ予言所の一件で、アラビカが連れて行かれたところだ。
プミラは別のことを思い出しているらしい。
「ああ、あそこのギミック、そろそろ点検時期かもしれひんなぁ」
アイビーはうなずいた。
「プミラ、サボテン治療屋にグラスルーツは行っているかしら?」
プミラは緑の野球帽をいじりながら考える。
「旧式…やね。時折断線せぇへん?」
「そうね…」
「アスパラガスもつれてった方がいいかもしれへん」
「わかりました、呼び出します」
アイビーは、細かいギミックの奥に手を突っ込んだ。
そして、もう片手で、上からおもむろに受話器を取り出す。
間があり、アイビーが話し出す。
タムに仕事を言うように。
タムはそれを見ていたが、やっぱり疑問がわいた。
アイビーは、簡潔にアスパラガスと連絡を取って、受話器を上に戻した。
「あの」
タムは話し出す。
「僕は何のために行くんですか?」
プミラがぽんぽんとタムの頭を叩いた。
「きっと、お見舞いやな」
「おみまい?」
アイビーが、いくつかギミックをいじり、
そして、タムに向き直った。
「そうです。タムには、何人かにお見舞いに行ってもらいます」
「…アラビカさんとか?」
アイビーはうなずいて、
片手でギミックをいじった。
きーこーきーこー
不思議な音が聞こえる。
そして、アイビーは一枚の紙切れを取り出した。
「印刷しました。お見舞いに行ってほしい人物を、リストにしました」
アイビーはタムにリストを渡す。
アラビカ以外は、知らない人物だ。
プミラが覗き込む。
タムは、あわてて隠した。
「僕のお仕事だもん!」
プミラは、笑った。
「ええやん、減るものでもないし」
「プミラは、プミラのお仕事があるもん」
「せやけど、お見舞いの人、気になるわ」
「僕のお仕事!」
「減らないやさかい」
扉が開く気配。
そして、閉められる気配。
タムはそれに気がつかない。
「僕のだってば!」
と、プミラから逃れるように上に上げたりストは、ひょいと誰かが手に取った。
「無防備でがす」
タムの上から、もじゃもじゃのアスパラガスが笑っていた。
アスパラガスは、タムにそっとリストを返した。
「戦うわけじゃないでがすけど、気配には注意するでがす」
「…うん」
タムはうなずいた。
「それでアイビーさん、サボテン治療屋でがすね」
アイビーはうなずいた。
「ヘデラさんが気になりますでがすか?」
「リストを見たのね」
「はいでがす」
「ああ…ほいで、グラスルーツをつなげたいってわけやな」
「え?え?」
「タム、リストを見るでがす」
戸惑うタムはリストを見る。
「コーヒー・アラビカ。ヘデラ・ゴールデンセシリー。ポリシャス・マルギナタ」
タムはリストを読み上げた。
三人。アラビカさんは知っているけど、
ヘデラさんはアイビーさんと知り合いのようだし。
一体なんなんだろう。
「へぇ、ポリシャスの爺様までお見舞いですかいな」
「ポリシャス…」
タムは口に出して言ってみる。
どこかで聞いた…
「チャメドレアはエリクシルでつなげ。忘れるな、ポリシャス」
アイビーがそらんじる。
「タム、あなたが聞いた、予言の内容です」
「ポリシャス…おじいさん?」
アイビーはうなずく。
「ポリシャスは、雨恵の町の町長です。身体を害し、今はサボテン治療屋にいます」
「へぇ、町長さんなんだ」
「養女として、チャメドレアがいます」
「それをエリクシルでつなげ?」
「そのあたりの予言はわかりませんが、これを機に、ポリシャスにも会ってもいいものかと思います」
タムはうなずいた。
予言の内容を思い返す。
予言を開いたから、僕がポリシャスに会うのかもしれない。
タムはそう思った。