反撃


「物騒でんなぁ」
「そうでがす」
火恵の民の後ろに、彼らがいる。
プミラとアスパラガスが。
「ほな、いきまっか」
「はいでがす」
火恵の民が構える。
火を出す構えだ。
プミラとアスパラガスの姿が見えた。
覚醒している。
髪は緑色に。
目も緑色に。
「現れよ、シャルトリューズ・ヴェール」
「現れよ、ベネディクティン」
おのおの唱え、構える。
チャメドレアが乱れる。
「ええい、焼き払え!焼き払ってしまえ!」
火恵の民が二人に…
届く前に、風が吹いた。

ひゅんひゅんひゅんひゅん…かちり

風は火をかきとばし、
その中心で緑色の長い槍を、プミラがまわして、構える。
「シャルトリューズは容赦ないで」
隣で地鳴りがする。
ズゥン…
アスパラガスの手には、
ひょろりと背の高いアスパラガスと同じくらい大きな、琥珀色したバトルアクスが。
アスパラガスは、軽々と持って見せる。
「ベネディクティンは加減を知らないでがすよ」
おのおの、構えた。
気迫が違う。
火恵の民4人が、明らかにひるんでいる。
チャメドレアは、感じ取ったらしい。
「何をしている!お前たちの火で!火で焼き尽くすのだ!」
タムは、火恵の民を見る。
右手に火を持ち、黒ずくめなことは、
フユシラズの予言所に襲撃したギルビー・ジンと一緒だ。
しかし、タムは感じる。
こいつらは力が弱い。
火の力というか、
命の力が弱いと感じる。
見くびるわけではないが、ギルビー・ジンより、
なんと言うか、大量生産された兵隊という感じがする。
プミラとアスパラガスの気迫からくる、温度差がそうさせているのかもしれない。
「ほほぅ…」
プミラが、声を上げた。
「ウメシュサワー…やな、この火の感じ」
火恵の民が、反応する。ぴくりと。
「どこから買った火恵の民の兵隊かは知らんけどなぁ、引っ込めたほうが身のためやで」
チャメドレアは…命じた。
「焼き払え!」
火恵の民…ウメシュサワーと呼ばれた4人が火を持って襲い掛かる。
プミラは、黙って槍を回した。
鋭い音を立てて、火恵の民の指がちぎれる。
風だ、風をともにしているのだ。
アスパラガスが、バトルアクスを振りおろす。
轟音を立て、1人を真っ二つにする。
「背中借りるで」
プミラがアスパラガスの背中をけり、大きくジャンプする。
ぼんやりした太陽を背に、プミラが槍を構えて落ちてきて…
1人、串刺しにした。
暴走した火が、あたりを焼く。
タムはあわてて、我に返り、入り口の消毒ボタンを叩いた。
水がざぁとふってくる。
残り2人。
プミラとアスパラガスが大立ち回りを演じる。
チャメドレアはヒステリックに怒鳴っている。
火恵の民の右手が火を噴いた。
プミラの槍が右手ごとなぎおとす。
透明の血液らしいものがあふれたあと、アスパラガスのバトルアクスが粉砕した。
残り1人。
その1人は…こちらに向かってくる!
右手に火を携えて!
タムは一瞬頭が真っ白になった。
真っ白になったそこに、流れ込んでくる言葉がある。
「今こそ使え」
火恵の民が、ひどくゆっくり見える。
全てがスローモーションの中、病院側の人ごみから、何かが投げられた。
タムは、スローモーションの中、投げられたものを片手で受け取る。
「使え。名前はオレンジ。偽弾だ」
ぎだん、の、意味はわからない。
タムは、覚悟した。
ジャケットに隠れた、銃弾を取り出す。
右のスミノフを引きちぎる。
手の中でオレンジとスミノフが合わさり、タムに名前を教えてくる。
タムは銃弾と偽弾を口に放り込み、がりりとかじった。
途端にはじける感覚。
タムの視界がいきなりクリアになった感覚。
壊れた時計がやけに大きく刻んでいる。
「現れよ、スミノフ」
タムは唱える。
「現れよ、オレンジ」
タムの両手に力が宿る。
タムは両手を合わせた。
銃弾たちが教えてくれた名前を唱える。
「ともに現れよ、スクリュー・ドライバー!」

タムの手に、オレンジ色のナイフが現れる。
タムの髪は緑色になり、目も緑色に。
タムは、戦いに身を投じた。


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