得体の知れない
カルタの王子は次の呼び出しがあるまで待機。
仮面をつけたまま、シングルの戦いをぼんやりと見つつ、
頭の中では例のごとくひつじ村。
今年も問題はないだろうなとカルタの王子は思う。
慢心なのではなく、事実として。
ハードルはかなり上がった気がするけれど、
ダブルもチームも、この分ならいけるだろう。
頭数はそのときにそろえればいいだろう。
どうせ一人でやるのと変わらない。
喧騒ががやがやと聞こえる。
勝ったの負けたの、読み上げる声だの。
そのなか、
「やぁ」
カルタの王子に、声がかかる。
見ればパンダ店長がいつもの顔をしている。
「なんだよ」
「シングルは問題ないみたいだね」
「らしいな」
「気になる噂を持ってきたよ」
パンダ店長はカルタの王子の隣に座る。
「ギエンさんはチームに絞ってきたってさ」
「なんでまた」
「わからないね。今年は全部で優勝は難しいかもしれないよ」
「やるのが王子ってもんだろ」
言ってからそっとカルタの王子はため息。
(ちょっとめんどくせぇけどな)
「それで、頭数はそろったの?」
「店長は?」
「私はドクターストップがかかっているから…」
「いるだけでいいんじゃね?」
「カルタを見ると頭痛くなる病にかかっていてね…」
「今考えただろ」
「いやはや」
「とりあえず、ダブルで隣に座ってくれ。目隠ししててもいい」
「そういうことなら」
パンダ店長はいつもの表情のままうなずく。
「私が思うにね」
店長は話し出す。
「チームで勝てる術を見つけた人は、チームで強いんじゃないかと思うんだ」
「どういうことだ?」
「ポケモンバトルと一緒。補佐が怖いと思うのだよ」
「そんなものか。つうかポケモンかよ」
「王子が動けなくなったら、それはとても怖いと思うよ」
「そんなことできるのか?」
「ありうるってことだよ」
カルタの王子は考える。
動けなくして、か。
神速の王子の手を封じる術、
それを持っているから、チームに絞ってきたやつもいる。
得体が知れない術に勝つことはできるのか。
まずはシングルで勝つこと。
カルタの王子を呼ぶ声がする。
出番だ。
「がんばってねー」
と、パンダ店長が見送る。
カルタの王子は、軽く片手を挙げて答える。