マジカルばあちゃん


カルタの王子は、カルタ台の座布団に座る。
相手は、恰幅のいいおばあさんだ。
「わてはマイばあちゃん。よろしゅうに」
「よろしく」
カルタの王子は、頭を軽く下げる。
「王子の連勝記録を止めるつもりでここにきましたわ。覚悟はええ?」
「覚悟も何も」
カルタの王子は、答える。
「連勝記録はいずれ止まる。それがいつかはわからない」
「ほっほっほ、ならばそれが今回でっしゃろ。はじめましょか」
「ああ」

カルタ台から札が並べられ、
読み上げるシステムが読み込まれる。
カルタの王子の感覚に違和感。
札が、何か違和感。

『はじめます』
カルタ台が読み上げを始める。
最初の一文字で、カルタの王子は反応し、
札を取る
(さぁ、何をしでかしてくるのかな)
カルタの王子は、反応を待つ。
マイばあちゃんは、すっと後ろに手を回すと、
ステッキを取り出す。
「マジカルマイマイ。マジカルマイマイ」
呪文を唱える。
すると、札がもぞもぞ動き、
カルタの王子の記憶とは、札の配列が変わってしまう。
(なるほど、札の位置を記憶させないってわけか)
「札の配置が毎回かわりやす。ついていけまっか?」
「やってみればわかるさ」
「イケメンのそういうとこ好きやわ、ええわ、どんどんいきまひょ」

次の札が読み上げられる。
様子見なのか、カルタの王子は動かない。
マイばあちゃんは札を取ると、また、札の配置を変えてしまう。
「だいたいわかった」
「なんやて?」
「次は俺が取る。その次もな」
札が読み上げられる。
マイばあちゃんが反応するよりも早く、
カルタの王子は札を取る。
「な、なんで…」
「俺は札を記憶して取っているんじゃない。形が一致しているのを取っているんだ」
「形やて?」
「この範囲内に、読み上げた札と呼応する形を一瞬で探して取っている。記憶じゃないんだ」
「それじゃ、札を覚えてるわけじゃ…」
「厳密に言えば、俺は覚えていない。位置を変えようが、その度に探す」
マイばあちゃんは、それでも戦う意思を途切れさせない。
「ナンボでもいうがええわ。わてはそれでも負けんわ」
マイばあちゃんは、カルタの王子に本気で挑む。

対マイばあちゃん戦。
カルタの王子の勝利。


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