シンクロする
とんとんとダブルの試合がおこなわれる。
カルタの王子とパンダ店長のコンビは、
順調に勝ち進んでいった。
彼らに限界はあるのか。
限界のない彼らが勝ち進むのが見たいのと、
それを止める誰かが出てきて欲しいのと、
ヒーローでもなく悪役でもなく。
それでも、彼らは注目の的であった。
次の試合は、ヨーマとネコヌのコンビだ。
ダブルの試合も残り少なの今まで、残ってきたというのは、
何かしら特殊な技を使えると思って間違いない。
奇人変人のバーゲンセールだと、ぼんやりカルタの王子は思う。
カルタ台の座布団に座り、
相手のヨーマはパンダ店長をちらりと見る。
「ほほほ?」
「気がついていないならいいんだ。誰にとってもね」
ヨーマは独り言のようにつぶやく。
カルタの王子様は引っかかったが、
それを聞く前にカルタ台が試合開始を宣言する。
『はじめます』
悲しいかなカルタの王子の宿命、
条件反射のように、カルタ取りにスイッチが入る。
様子見のように互いに札を取る。
均衡が破られたのは、そんな時。
「それじゃ、ネコヌさん、始めようか」
「はーい」
ヨーマとネコヌの、気配が変わる。
「猫の目、いくよ」と、ネコヌ。
「空蝉、発動するよ」と、ヨーマ。
「気をつけろ!相手は視界を奪いにくる!」
パンダ店長が叫ぶ。
カルタの王子の視界が真っ暗になる。
正確には、カルタの王子の視界が、ネコヌの猫の目になる。
そして、
「僕はネコヌさんの目とシンクロをしている。カルタの王子の目は今や僕らの目になる」
気配を感じることのできないヨーマの手。
「空蝉は気配を完全に断った札取り技。さぁ、どう出る?王子?」
今までサポートに回っていた店長が、
追撃を開始する。
(俺は、何をしている)
カルタの王子は奪われた視界で自問する。
(真っ暗だ。どうすればいい)
(どうもこうもねぇな)
(感じろ、カルタの気配を)
(ああ、そうだ、俺は…俺は…)
「俺はカルタの王子だ」
カルタの王子様が宣言し、読み上げられた文章の一文字目で反応して、札を取る。
「なっ」
ヨーマが驚く。視界はいまだ彼らの手にあるのだ。
「カルタゾーンが発動したね」
店長が解説する。
「すべてのカルタの位置を把握し、読み上げ文章の乱数をも把握する技」
「そんな、まさか」
「今このとき、このカルタ台は彼の世界そのものなんだ」
解説を終え、パンダ店長は倒れる。
対ヨーマ&ネコヌ戦
カルタの王子&パンダ店長の勝利