終わらない道の途中


パンダ店長が倒れ、
カルタの王子がカルタゾーンで勝利を手にした。
それは、どこか現実味を欠いた光景。
それは、店長がパンダ頭だから、だけではない。
人の感じるところを越えた戦い。
戦いが決してようやく、
パンダ店長はカルタ台からおろされる。
「店長」
カルタの王子が声をかける。
「すまない、右肘をやったらしい」
「おさえてるそっちは左なんだが…」
「ふはは、ばれてしまっては仕方ない」
「何がばれたんだか」
「私は限界だということがばれてしまったよ」
パンダ店長はいつものボケをするように、とらえどころなく。

「ヨーマさんはわかっていたようだけどね。私の限界を」
ヨーマはうなずく。
「勝てればいいと思っていました。カルタ台にあがる以上、それが勝負だと」
「そう、それが勝負だ」
パンダ店長は肯定する。
「どんなことがあろうとも、勝負の前には平等だ」
パンダ店長はカルタの王子のほうを向く。
「私はここでリタイアだ」
「ああ」
「チーム戦が控えているが、私は出ることができない」
「だろうな」
「でも、私でない誰かとチームを組むことで、得られるものがあるはずだ」
「誰か?」
「王子のカルタ道はまだ始まったばかりだよ」
カルタの王子は少しわからない。
早く札を取るだけ、
それだけのことで得られるものがあるのだろうか。
「パトラッシュ、私はもう疲れたよ」
店長はため息をつく。
「縁起でもねぇな」
カルタの王子様は悪態をつく。
「ほほほ」
パンダ店長は笑う。いつものように。

パンダ店長は会場の端っこで寝かされる。
カルタの王子は、店長が死んでないことだけ確認して、
「それじゃ、残りも勝ってくる」
カルタの王子は宣言する。
カルタ道は始まったばかりと店長は言っていた。
終わりがどこかわからないけれど、
見えるものはある。
それは、勝つこと。
誰よりも早く札を取って、勝利すること。
「始まったばかり、か」
むしろこれからがカルタ大会の本番なのかもしれない。

死亡フラグを立てておいて回収しないであろうパンダ店長を残し、
カルタの王子は次の戦いに挑む。
適当な代役を立てて、ダブルの優勝を確実にし、
迎えるはチーム戦。
まだ負ける気はないし、
まだ、カルタの道は負けることを許していない。
そんな気がする。


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