桜花と影と仮想現実


チーム戦が始まる。
カルタの王子はネジをとりあえずのメンバーにして、
店長の置物をもう一人分の枠に入れた。
遺影でもいいかと思ったが、
まぁ、死んではいないし、置物でもどうにかなる。
ネジはメンバーに抜擢されたことに不安を隠せないようだったが、
やるしかない、と、気持ちを落ち着けたようだった。

呼び出しがかかり、カルタ台へ。
チーム戦は以前説明したとおり、3対3でおこなう。
カルタの王子と、ネジと、店長(の、置物)
対するは、
ハルカ、ワガ、ビブの3人。
彼らのまとう雰囲気は静かだ。
「王子」
ハルカが声をかける。
「見えるものが現実だと思いますか?」
「それを信じるしかないだろ」
「現実が拡張されるとしたら、どうします?」
「拡張?」
「見えるもの感じるものが、仮想現実で拡張される、そのとき王子は、どう戦いますか?」
ハルカは、小型のコンピューターから、
規模の大きなコンピューターにアクセス。
そこから、仮想空間を引っ張り出して、
衛星を経由して、カルタ台にピンポイントで展開する。

「金かかることするなぁ…」
カルタの王子はぼやく。
「そのうち、もっと簡単に仮想空間を展開できるようになります。今は、これで」
カルタの王子は自分の手を確認する。
自分の手であるはずなのに、モニタを通したように感じる。
カルタ台は、いつもと変わらないように。
『はじめます』と、宣言する。

ネジは小さく数を数えている。
リズムが作れているようだ。
調子よく何枚かの札を追う。
そのネジに、ワガが手を向ける。
「桜花繚乱!」
満開の桜が狂った風になって炸裂する。
どこから、とか、どうして、とかは意味を持たない。
ここは拡張された現実。
使いこなせば桜が襲ってくることもある。

ビブはその中、普通に札を追っている。
何か特別すごいことをしているわけではないが、
淡々とした中に、まだ何かあるように思わせた。

(これが仮想って言うなら…)
カルタの王子は考える。
(桜のそれのように、使いこなせることができるはずだ)
(多分言語が通じれば…)
(簡単なそれでいい、組めるか…)
カルタの王子の手が止まる。
ビブがはっとする。
「ハルカさん、この空間をとかないと!」
「遅いな」
カルタの王子が、三人。
仮想空間ならではの技。
「勝たせてもらう。仮想空間に感謝するよ」

対ハルカ&ワガ&ビブチーム
カルタの王子チームの勝利。


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