決勝戦
カルタ台が読み上げる文章の最初の一文字で、
ダガシとカルタの王子が反応し、
すかさず王子の隣から、アズキばあちゃんがトリックハンドを仕掛ける。
ダガシはお手つきになる。
カルタの王子は札を取る。
この間一瞬。
二枚目の文章の読み上げ。
ギエンが札を掠め取る。
(へぇ…ここまで残ってきただけはある)
カルタの王子は思う。
(けれど、速さだけならダガシさんも速い、それ以上の何かがあるはず)
三枚目。
カルタの王子が反応したところを、
投げられたカルタの札が狙い撃ちをする。
ビブの手がとっさにかばい、軽くけがをする。
カルタの札を投げたのは、ワガだ。
ギエンの取った札を、手裏剣のようにして、相手を狙い撃ちにするようだ。
何枚も取られたのなら、
それをすべて札手裏剣にすることも可能かもしれない。
「王子」
ギエンがつぶやく。
「うん?」
「感覚を奪われたことはおありかな?」
「視界を奪われたことならな」
「ほう、では、五感全てを奪われたことは?」
「今のところ、ない」
ギエンが少しだけ笑った。
「では、その五感を少しだけ止めていただこう。奥義・凍てついた街!」
凍える風が吹きすさぶ。
凍てつくそれをまともに食らったのは、
カルタの王子ではなく、ビブだ。
驚愕をするギエン。
「私の能力は影、何かを仕掛けられるときに身代わりになることが…できます…」
ビブは静かにそう言い、一時的に五感を停止する。
凍てついたビブのまぶたを王子はそっと閉じる。
「…ったくどいつもこいつも」
カルタの王子は悪態をつく。
「みんなこれ以上ねぇってくらい、本気になってやがる」
「勝ちたいんですよ、みんな、あなたに」
ギエンが言うそれを、カルタの王子は鼻で笑う。
「これだけの本気見せ付けられて、はいそうですかって勝ちを渡せっかよ」
「ならば…」
「俺は勝つ!本気のやつらみんなコテンパンにのして、その上で勝つ!」
ギエンの能力は五感を奪うもの。
それは同時に複数は無理とカルタの王子は考える。
アズキはダガシの速い手を、トリックハンドで食い止める。
カルタの王子は食い止められたその間をかいくぐり、
ワガが繰り出してくる狙い撃ちを、片手で止めながら札を取る。
カルタの王子の意識が切り替わる。
カルタゾーンに入る。
誰も追いつけない神がかり的速度、このカルタ台の支配者。
咆哮、そして、勝利。