龍の頭


この時代、政府公認の裏金ころがしがいる。
様々の方法で、
裏の金を流している連中だ。
国民の質素倹約の行き先は、
膨大な税金の流失につながっている。
国民には還元されない。
なのに、質素倹約がよいことと、
国民には刷り込まれてしまっている。

裏金ころがしを仕事とする、
ドラゴンという組織がある。
頭はショーヤという青年である。
政府公認の裏金ころがしで、
ショーヤは莫大な報酬をもらっていた。

「どうせ、この数字も税金なんだよな」
ショーヤはため息をつく。
らしくないとは思いつつ、
部下がいないところでは、こうしてショーヤはため息をつく。
政府が質素倹約を推奨しているが、
金の行き着く先は、いつだって、ろくでなしのところだ。
ショーヤ自身もろくでなしだし、
政府要人とされるのは、たいていろくでなしだ。
ひどい世の中になったものだと、ショーヤは思う。

来客を知らされ、
ショーヤは通せと告げる。
連絡があった術師というやつだろう。
なんだか知らないが、
連絡があったときから、
妙な感じがしていた。

たとえば、金の転がる音がするとか。
そんな曖昧な感じだ。

術師はショーヤの部屋に通される。
「…ムダヅカイン、と、いったな」
「はじめまして、ショーヤさん」
「ショーヤでいい。で、…あんたは一体なんだ?」
「散財を目的とするもの、です」
「へぇ、それじゃ、龍の巣にある金を使えってことかい?」
ムダヅカインはにやりと笑う。
ショーヤは金の転がる音を聞いた気がする。
裏金だって金だ。
そしてもともとは国民の金だ。
ショーヤは考える。
ドラゴンの頭として、
龍の巣にある財産を使うべきか。

「しゃあないな」
ショーヤはため息をつく。
「金は天下の回り物でなくちゃな」
「そう、その通りです」
ムダヅカインはわが意を得たりとうなずく。
「ただ、龍の巣の金はやばい金だ」
「でも、表立ったことには使えない」
「そうだ、それでもよければ」
「上等です」

ショーヤは、
龍の巣から龍の形をとって、
金が飛び立つのを感じる。
世の中荒らしてやれと、
ショーヤは願った。


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