未開の地


世の中には、ゼニーの力の及ばない、
未開の地がある。
サンザインもシッソケンヤークも、
そこまでは戦いを広げていない。
ただ、そこで戦い、生き残って、
酋長になった女性がいる。
カチと呼ばれるその女性は、
もともとはゼニーの力を使うことができる、
一人のセレブだった。
店を持ち、島を持ち、
優雅な生活に飽き飽きして、
たまりたまった鬱憤と財産をはたいて、
未開の地に戦いを挑んだ。

美しいカチは、
想像以上にゼニーの力を溜め込んでいた。
未開の地の戦士たちを圧倒し、恐れさせた。
セレブは一人の女戦士となり、
やがて酋長に上り詰めた。

カチは遠いふるさとを思う。
金というものが回っていたふるさと。
質素倹約とか何とか言っていた。
この地にはそんなもの関係ない。
ただ、生き抜く力があればいい。
生産をし、消費をし、命に感謝する。
自然と生きていくうちに、そうなる。
そういった、無駄のない生き方が、カチは好きだ。

無駄だらけの生活も悪くなかった。
セレブとしての生き方も、嫌いではなかったが、
退屈だった。
カチは根っから戦士だったのかもしれない。
この未開の地で、
戦い続けるのも、悪くないと思う。
美しい顔に、激しい力を隠して、
カチは率先して戦う。

(ムダヅカイン)
カチは不意に思い出す。
(ムダヅカイン・チャン)
(そう、チャンといってたな、あれは)
(どうしているだろうか)
カチはムダヅカイン・チャンに思いをはせる。
また何か面倒なことをしているんだろうか。
金は使えるときに使うべきだと、
そんなことを信条にしていたっけ。
ここに金はない。
チャンがここに来たら、どんな顔をするだろうか。
ゼニーの力も何もないところ。
無駄遣いなんてしようと思ってもできないところ。

(ざまみろ)
カチは心であかんべをする。
(あたしは金以上のことを手に入れた)
(チャンにそれができるか)
カチは我知らず微笑む。

ここは未開の地。
カチは美しい女酋長。
世界の端っこ、カチは今日も戦っている。


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