ひだまり


ネコヌはとあるお屋敷にいた。
サンザインダークとして、
サンザインと敵対したこともあった。
それらがすべて夢のようでもあったし、
また、このお屋敷の陽だまりが、
夢のようでもあると思った。

「ネコヌさん」
お屋敷にいる秘書が声をかけてくる。
秘書ヨーマ少年。
かつてネコヌをゼニーの暗黒面に落とした少年だ。
「平和すぎて退屈?」
「んー、わかんない」
ネコヌは気持ちよさそうに目を細めながら、
そんなことを言う。
ネコヌはお屋敷の主をよく知っている。
そしてその主は、
今ちょっと作業で手がはなせなくて、
ネコヌはちょっと退屈している。

「ネコヌさん」
「ほよぉ?」
「膝枕で耳掃除してくれたら、何か面白い話をしてあげるよ」
「ん、わかった」
ネコヌは疑うことを知らない。
耳かきを持ってきて、陽だまりで準備。
ヨーマはいつものことであるかのように、
膝枕に頭を乗っける。

お屋敷の一角で、
町の音は遠く。
陽だまりはやさしく。
世界がハサーンに覆われかかったことも嘘であるかのように。

「ネコヌさん新聞読んだ?」
「まだー」
「うん、新聞に詐欺の載らない日はないくらいだよ」
「そうなんだ」
いいながらネコヌは耳掃除に夢中になる。
どうやらあまり聞いていないようだ。
ヨーマは心地よく身震いをして、
「それで、募金詐欺が摘発されたって。今日のに載ってた」
「騙すの?」
「うん、騙して金をむしるの」
「ほよぉ…あ、大きいのとれた」
ネコヌはうれしそうにそんなことを言う。
やっぱりあまり聞いていない。
「まったく、はした金で大騒ぎしすぎだよね」
「ほよぉ」
「教授ならこういうね、目の前の利益で目が曇っているって」
「教授?」
「うん、ちょっとお金をよく使うけど、すごい教授だったよ」
今ならヨーマはそういえる。
ただ、その教授の元に戻るのは、
今となっては素直に戻りにくいように思った。
ヨーマの中でちょっとだけこじれている。

陽だまりぽかぽか。
お屋敷の一角で静かに。
どうにも、この膝枕は心地いい。

足音がする。
屋敷の主、シッソケンヤークが部屋から出てきたらしい。
グリフォンの意識を取り出すことに成功、
その身体は某国製部品を使ったけれど、
さてどう出たものか。

ヨーマは寝たふりを決め込むことにした。
平和はとてもあたたかいものだと、ようやく気がついた。


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