安い物件の罠
ルルは引越しをした。
サンザインの名が示すとおり、
散財をよくする彼女である。
何にもない部屋を彼女は借りた。
この中を自分の色に満たすための散財。
それはとても素敵なことだろうと思われた。
この部屋については、
以前、ヘキの結婚の準備で集まった際に、
グリグリとヨシロクがすすめてくれた物件だ。
安くて何にもない部屋ですと、
そこをことさら強調されていた。
「さて、照明くらいは必要ね」
ルルは引越し荷物の中から、
きれいな照明を取り出してとりつける。
点灯させようとするが、うまくいかない。
ルルは首をかしげる。
まずは電気が来ていないことを考えたが、
一瞬は点灯するのだから、
完全に来ていないわけではない。
「安い物件って理由、なのかしら」
ルルはめんどくさいなぁと思う。
照明が使えないなら、
ほかの家電もことごとくだめじゃないか。
「契約のアンペアとか変えればいいのかな」
ただ、と、思い直す。
この部屋を含めた賃貸物件が、
本当に普通の電力がきているのだろうか。
安い物件と強調されているものだ。
何かあってもおかしくはない。
ルルは考える。
そして、
「あたしはサンザイン、何があっても負けない」
部屋でルルはつぶやき、
そう、ヒーローは日常になんか負けないと、
ルルは自分を鼓舞する。
大家に連絡を取ると、
案の定というかなんというか、
地下に発電機の男がいて、
発電をしているのだが、調子が悪いのかもしれない。
…などという返事があった。
防犯意識の甘い地下の階段を下りながら、
ルルはなんとなく思う。
これが俗にいう、騙されたと思って、というものなのだろうか。
私は騙されたのかなと、ルルはなんとなく考える。
安い物件に引っかかりましたという、
詐欺か何かなんだろうか。
(まぁいいわ、住めば都って言うし)
ルルは深く考えない。
地下の一室に発電機男がいるという。
ルルは自分のゼニーの力がまだあることを確認し、
「これで発電がよくなるといいけど」
ルルはポジティブに考える。
発電がうまくいったら、次は内装。
好き勝手に部屋を埋めよう。
ルルは鼻歌すら歌いながら、発電機男を探した。
安物件に、まともな電気が通ったのは、
それからまもなくだという。