あの気配
超級風水師、ギエンは、
龍脈の流れが乱れていることを感じていた。
この龍脈というものは、おかしな言い方をすれば、
金の流れでできたものだ。
誰かがゼニーとか言っていただろうか。
とにかく、おかしなものだが、
金で作られた力の流れという、
そういう奇妙な、この地域独自の流れみたいなもの、
それをギエンは龍脈という言葉で表現している。
龍脈は、龍がどこかから放たれ、
金の流れがそうであるように、
ぐるぐると渦を巻いている。
…はずなのだが、最近どうも流れになっていない。
スーツ姿にスコープをつけたギエンは、
街の龍脈を注意深く観察する。
そして、気配を感じる。
「あの、気配に似ていますね」
あの気配。
ギエンの感じる古い気配。
それは、龍は不老不死の力があると、
操ろうとしていた集団。
そのとき、四聖獣見立てを行おうとしていた、
超級風水師がいたと言う噂もある。
それがギエンなのかは、彼は語ろうとしないが、
とにかく、ギエンの感じる古い気配。
それは、今、超級風水師の彼を、
刺激するような気配だった。
また、双子を作ったりしているのだろうか。
鳴り響く力を奪ったりしているのだろうか。
思うところは山ほどある。
この気配に感づかなければ、
龍脈を正しただけで終わらせるつもりだった。
でも、多分関わってしまうのだろう。
ゼニーの力。
噂で聞いたその力が、
龍脈から、その気配に流れていることを感じる。
「今度は何をしでかす気ですか」
ギエンはつぶやく。
龍脈の龍は、弱ってきている。
今、龍脈を正しく見立てたところで、
これは一時凌ぎに過ぎないと感じる。
「超級風水師ですからね。これは、仕事です」
ギエンは己に言い聞かせ、走り出す。
あの時と同じような気配。
悪意に満ちた言葉を送ってきた奴と同じ気配。
意味に満ちた意味のない言葉の羅列。
あの時メール同様、
『気配』になったあいつは、
今も皆の心をもてあそんでいるに違いない。
懐かしいような、
宿敵に出会えたような感覚。
奴が滅ぶはずがない。
バランスのもとに姿を消していただけ。
ありがちでありがちでない、
さめた冗談を、飛ばしに戻ってきたのだろう。
ギエンの心に記憶に、
強く焼きついている気配。
みんなを手玉にとって、龍脈の力を奪おうとしている、
ギエンは超級風水師。ならば。
…こいつは、宿敵だ。
ギエンは微笑んだ。
こういうことがあるから、超級風水師はやめられない。