金の切れ目が
サンザインは、多くの信頼を奪われた。
散財は悪として刷り込まれ、
人々はサンザインを迫害した。
サンザインはもはや変身することもなくなった。
変身はすなわち、
世の人の攻撃を受ける危険すら伴う行為になった。
それほどに、詐欺で疑心暗鬼になった人々は、
攻撃的になり、それを、サンザインに向けて爆発させていた。
サンザインは、それでも、
ヒーローであることを貫こうとしている。
人のために散財を、
人に攻撃することなく、騙すことなく、疑うことなく。
強く、尊くあれと。
ゼニーの力がそう導くように。
師であるムダヅカインがそうであったように。
正体の見えない敵。
噂をばら撒いている存在。
人は踊らされ、
サンザインは疲弊する。
やがて、サンザインからゼニーの力が失われ始める。
それは、金の切れ目が縁の切れ目と、
離れていったものが奪っていったものだ。
信頼の縁は切れ切れになり、
それが負のスパイラルをうむ。
力のないサンザインを、
人は容赦なく攻撃する。
人は悪を倒す気でいる。
流れに乗り、何かを転覆させて新しいことを始めようと、
そのための悪のシンボルに、サンザインはされた。
(間違っていたのか)
サンザインの中に、疑惑。
(俺たちは間違っていたのか)
口に出せないけれど、自分すらも疑う、声。
この世界を救ったこと。
それは、間違っていたはずがない。
笑顔を守り、懐を守り、
明るい未来を作るはずだった。
なのになぜ、
こうして苦しいのだろうか。
散財をすること、
ゼニーの力を回すこと。
時にはシッソケンヤークと手を組んだことだってあった。
この世界を救ったこと、
それは…間違っていたのか?
飯店にこもる彼らに、
ひどい言葉が投げられる。
心が折れそうになる。
みんなの笑顔を忘れそうになる。
平和だった頃の記憶が、
壊れそうになる。
詐欺の悪党サンザインめ!
人の金を貪り食う悪党め!
ひどい言葉が飛び交う中、
サンザインの苦しみと悲しみの中、
彼らのもとにすっと人影が。
「郵便です」
どこにでもいそうな郵便屋が、
いつの間にか飯店に入ってきていた。
「サンザイン様宛に、郵便です」
郵便屋は微笑んだのに、
その顔はぼんやりとしか思い出せなかった。