心の闇


レッドの衝撃波で、
暴徒と化した人々が、次々吹き飛ばされる。
悪夢が晴れていく。
人々の心から、
闇が晴れていく。
疑うことで心を覆っていた、
暗闇が晴れていくのを、みんな感じている。

心の作った光の龍が、
人々を照らしていく。
心には光もあるし、闇もあるだろう。
疑いの闇をいたずらに広げていた力が、
今、払われていく。

暴徒はいまや、ただの人となり、
悪い夢から覚めた顔をして、
不思議そうにあたりを見ている。

光の龍が照らし出すあたりに、
一点の闇。
光が強ければ強いほど、濃度を増す、闇。
そこに、一人、人が立っている。

「あれが…悪の化身だ」
ブラウンが言う。
「疑う心で皆をばらばらにしようとした、暗鬼のサギーだ」
「サギー?」
「信頼を破壊して、ゼニーの力を奪っていたと聞く」
「許せないな」
レッドはつぶやく。
ブラウンはうなずく。
「…奴は強いぞ」
「負ける気がしない」
レッドの心から弱さが消えている。
不敵な笑みは、いつもそうであったかのように。

「さぁサンザインの皆さん。お楽しみいただけましたか?」
闇は語る。
その声を、サンザイン・イエロー、グリグリは知っている。
「…ヨシロクさん」
「わかったでしょう、俺の言うことは全部嘘だったんだよ」
イエローは首を横に振る。
「ヨシロクさんは何でも知ってたよ」
「なんにも知らなかった、俺はあの人の人形さ」
闇が自嘲気味に語った。
「あの人、だと?」
レッドが聞き返す。
「そう、本当の黒幕ってのがいるんだ」

人形のヨシロクを包んでいた闇が、
邪な気配を呼ぶ。
嘘で固められたサギーが、
その存在をかけて、
何かを召喚している。

レッドはそれを止めなければと思った。
ヨシロクに向けて走り出そうとする。
しかし、誰かに肩をつかまれ、
レッドは立ち止まった。

「今、行っては、巻き込まれます」
レッドを止めたのは、
超級風水師の、ギエンという男だ。
「あんたは…」
「職業柄、邪気には敏感です。今行っては物にされます」
「物に?」
「あの気配に…巻き込まれたら最後です」
「気配…それは何なんだよ」

「古いクーロンにいた、意味のない意味に満ちた存在」
ギエンは語る。
「名をつけるならば、奴は…」

邪な気が一点に集中し、
人形のヨシロクが壊れる。
『こちらでは初めてだろうかね』
声が響く。
それは正体の知れない声だった。


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