癒し


ワガは薬の補充をしていた。
今まで物語になっていないところで、サンザインは満身創痍まで戦い、
そのたびにワガが癒していた。
友人のビブがよく通う病院経由で仕入れたりするものだが、
そのビブも快方に向かっているし、
怪しい薬ではないと、いまさら思ったりもする。

今度は例のガタリと戦う羽目になるのだろう。
マネーの情報もワガの元には届いている。
使うとすれば、そういうのも操ってくるだろうと。
それは、まず間違いない見解だと思う。
ワガの考えではあるが、
物真似は決して病んでいる者がする行為ではない。
ごく一般の人も、楽なほうに流れれば物真似になる気がする。
無意識に楽なほうに流れるのは、
特別なことではない。
ワガだって楽なほうがいいと思うことはある。
でも、ワガはサンザインというヒーローになることを選んだ。
散財を通して、物を考えなくてはいけない、お手本になるものになった。
重いと感じることはない。けれど、難しいと思うことはある。
自分の散財がみんなのためになっているか、
そして、それは考え抜いたものか。
そして、それは正しいものか。
サンザインは正義のヒーローだから。
正義のためにならないといけない。
この薬は正義のため。
みんなを癒すために使う。
それはワガが選んだ道。
癒す正義でありたいと思う道。

ワガは薬のラベルや期限を確認する。
どんどん傷薬あたりから減っていて、
そういったものから真新しいものになっている。
いいことなのかよくないことなのか。
ワガは苦笑いする。
傷なんてこしらえない世界がいいなぁと。
正義とか悪とかなんてなくて、
あってもいいけど、平和に解決できたらいいなぁと。
比較的平和なこの町だからそんなことを思う。
ゼニーの力が、傷のない世界を作ることに貢献できたら、
それはワガの目指すところにちょっと近いと思う。
マネーの力はどうなんだろうか。
マネーの力は操られやすということだけど、
みんな傷つけないのがいいねというのを、
物真似したらいいかなと思う。
「うーん」
ワガはよくないことを考えようとする。
傷つけないということを、強制するような世界だったらやだなと。
傷の痛みを知らないばかりの人なら、ちょっとありうるなと。
ワガはため息。
考えすぎかなと思う。

薬の箱にふたをする。
癒しのヒーローであることに、今は誇りを持って。


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