黒猫の巫女
シャノの元に通知が届いた。
シャノはごく普通の幼い少女。
マジカル・マイにあこがれ、出てくる王子様にあこがれ、
夢の中でも一緒に戦えないかなぁなどと思っている、
ごく普通の少女だ。
そんなシャノに届いた通知というのは、
このたびマジカル・マイにゲストとして出る子役を募集して、
見事当選したというものだ。
シャノはとても喜んだ。
おもちゃのマジカル・マイのステッキを持ったり、
どんな決めポーズを取ろうかとか、
王子様を近くで見たらどんなにかっこいいだろうとか、
悪者をやっつけるときはどんな風にすればいいのだろうかとか、
とにかく、喜ぶことは一通りする。
夢じゃないかなと当然疑ったりもする。
こんなに幸せなことってないよと、シャノは幸せでちょっと不安になる。
このステッキも、サンザインだという人に買ってもらったんだったな。
シャノはそう思う。
ニュースはよく見ないからよくわかんないけど、
大人の中では、サンザインはいろいろころころ変わっていて、
ニュースの人も大変だなとシャノは思ったものだった。
マジカル・マイはそんなことないと、シャノは思う。
ずっとみんなのために、戦い続けるだろうし、
きっとマジカル・マイは勝つのだ。
シャノはそのお手伝いができる。
それが純粋にうれしい。
シャノの役どころは、黒猫の巫女という役らしい。
衣装合わせに行くと、眼帯のお兄さんがぴったりの衣装を作ってくれた。
シャノのこともよくわかんないはずなのに、何でだろうと、
シャノは不思議に思う。
眼帯のお兄さんは、微笑んで、
「プロは何でもこなすものだよ」
なんてことを言う。
「シャノちゃんもマジカル・マイの力になるんだから、プロだよ」
「ぷろ」
シャノは繰り返す。
「でも、プロもしんどくなったら、一人ではどうにもならないんだ」
「マジカル・マイでも?」
「うん、だから、みんなで支えてあげなくちゃね」
眼帯のお兄さんは少しまじめにそんなことを言う。
マジカル・マイが支えられるなんてことがあるのだろうか。
どんな悪者にも負けないマジカル・マイが。
「君は黒猫の巫女のシャノちゃんだ」
「うん」
「君から、立ち上がる力をもらう人が、これからきっと出るはずだ」
「シャノ、から」
「それはまがい物でない力だ。シャノちゃんの力なんだ」
シャノは不思議に思った。
普通の自分にも力があるということが。
「みんなに力はあるんだよ。信じればいいのさ」
眼帯のお兄さんはそういって、微笑んだ。