教授の信念
プロヴィニ教授は、まずいコーヒーを飲む。
元助手は帰ってくる気配はない。
こじらせたかなと思わないでもない。
まずいコーヒーと付き合うのもなんだし、
サンザインとしての、この一件が終わったら、
楽器の出費を抑えるから帰ってきてくれというべきか。
抑えるところが楽器で済むだろうか。
細かいところでいろいろ散財していそうで、
多分あの元助手は、的確に突っ込みを容赦なく入れてくるに違いない。
「それにしても」
元助手のヨーマ少年が、
シッソケンヤーク側についたのは、当時はびっくりしたものだった。
何かのあてつけだろうかとも思ったが、
思い当たる節はない。
ただ、有能なヨーマ少年のことだから、
もしかしたら、サンザインの補佐としても、働いてくれただろうかと思う。
あくまで、一つの可能性として、そんなことを思う。
一緒にヒーローになろうとは、なんとなくいえなかったものだった。
まずいコーヒーを一口。
やっぱりまずい。
ヒーローになりたかったのだろうかとプロヴィニ教授は思う。
ちょっとばかり値のはる椅子が、その背を受け止める。
散財を力にできるのならばと思ったが、
正直こんなに大きくなるとは思っていなかった。
ゼニーの力、そして、今回絡むらしいマネーの力。
サンザインで手に負えるのだろうか。
手に負えなかったらどうなってしまうだろうか。
引っ掻き回して放り出すのは、プロヴィニ教授の性分ではない。
自分が関わったならばなおさらだ。
最後まで、付き合わないといけないだろうか。
もっと自分はドライな性分だと思っていたんだけどなと、
プロヴィニ教授は苦笑いする。
ヨーマ少年がいないと、どうも調子が狂いっぱなしだ。
教授職がおろそかになりそうだ。
ヒーローはちゃんとけじめをつけるまで付き合おう。
サンザインも、プロヴィニ教授の選んだ道であり、
今は仲間もいる。
「さて」
プロヴィニ教授は調べ物にかかる。
セイサンの賢者というもの。
どの字を当てるかで可能性が大幅に変わるという。
消費の賢者はよく知るムダヅカインだと、
少し前にたずねてきた、イモという流通の賢者が言っていた。
セイサンの賢者はどこにいる。
セイサンを生産にしないといけない。
じりじりと生産をする力がなくなり、
真似して生まれたものに覆われてしまう。
プロヴィニ教授はため息。
どうやら最後までサンザインを貫けということらしい。