まねぶ


学ぶという言葉は、
まねぶから来ているそうだと、
学ランに身を包んだ、男子高校生は思う。
彼はナプ。
便器を作る子豚の格好をしていることもあるが、
たまに学生の格好をすることもある。
通称九龍高校の、この学ランは彼が作ったものだ。
そういう学校があるわけではないが、要は楽しむもの。
楽しむことに心血注ぐのは、大好きだ。

学ぶ。
この町には、学校というものはない。
ただ、住民がそれぞれ学んでいる。
学生というものが、格好でしかなくても、成り立つ町。
普通はどうなのだろうか。
ナプは他の町の学生というものを空想する。
先生の言うことを聞いているのだろうか。
そして、真似して学んでいくのだろうか。
真似したものを蓄積していって、
一つ一つが学生の力になっていくような気がする。
学生って言うのも悪くないんじゃないかなと思うけれど、
噂を聞く限り、学校というものが窮屈だと聞く。
そういうものなんだろうか。

真似とは、あくまでも土台を作るためのものじゃないかなと、
ナプは考えてみる。
基礎というもので、それがなければ先にすすみにくくなるもの。
洗練された道具が、大体同じ形になるように、
学生の頃に学ぶということは、
無駄のない基礎を叩き込まれてるんじゃないかなと思う。
そこから発展させるのは、応用力の問題かもしれないけれど、
でも、真似とは基礎を得る一つの方法であり、
未熟なうちはそれがとてもいい手段だと知っている。

「でもなぁ」
ナプはそれとは別の属性の真似を、最近見た。
真似したものを自分のものと言い張るようなもの。
そうして、対価を得ようとしているようなもの。
いわゆる、ただのコピーのもの。
いろんな言葉があるのだろうけど、
オリジナルってなんだろうとナプは思う。
自分で作ることの楽しみをナプは知っている。
学んで、そこから生まれるものの、すごさをナプは知っている。
だから、たまたま見かけた独創のかけらもないものに、
ナプはおかしいと感じた。
まねぶは学ぶこと。
真似はあくまで真似であり、そこを通じて何か学び取るものだ。
自分の考え方はおかしいのだろうか。
学ラン姿のナプは、ため息を一つ。
この町にない、この町の高校生、九龍高校のナプ。
まねぶということを、学生の彼は考える。
ただの真似では、誰も得をしないはずと、ナプは思っている。


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