コピーコイン
ネコヌは買い物に出かける。
ヨーマの指定の、コーヒー豆も買った。
質素倹約から反するかもしれないけれど、
おいしいものを食べるのは悪いことじゃないと思う。
とりあえず帰ればヨーマがおいしいコーヒーを入れてくれるはず。
コーヒーが嫌いでないシッソケンヤークも黙っていてくれるし、
ネコヌは一応サンザインだし、散財も悪いことじゃないよねと、
ネコヌは適当に理由をつけて、帰り道を歩く。
通りを歩いていると、何か奇妙な気配。
ネコヌはとっさに判断する。これはよくないと。
すると、何かがぶつかってきて、ネコヌの荷物を奪おうとする。
ネコヌは軽い身のこなしで、手刀を繰り出す。
それは相手の首に見事にヒットする。
ネコヌも伊達にサンザインをしていたわけではない。
相手はうめき、うずくまる。
ネコヌは相手をよく見ようとして、びっくりする。
「きみは…」
あまりにもヨーマそっくりで、あまりにもヨーマに比べて手ごたえがない。
「にせものめ!」
ネコヌはこのヨーマを偽物と断定する。
理由は、勘だとしかいいようがない。
そのまま臨戦態勢になろうとして、
買い物袋を持ったままだということに気がつく。
ほんの少し、買い物袋をどうしようか迷っているうちに、
偽者とされたヨーマは走って逃げようとする。
「あ、まて」
ネコヌが買い物袋を置いて、走り出すと、
偽物が、はぜるように何かの力で撃たれた。
ネコヌの後ろからその衝撃波は放たれていて、
振り返ると、不敵に笑うヨーマがいる。
「やれやれ」
ヨーマは一言つぶやき、ネコヌの買い物袋を拾う。
「はい、家に帰るまでが買い物だよ」
「うん」
袋を受け取り、ネコヌは訊ねようとする。
今の偽物は何なのだろうかと。
察したのか、ヨーマが話し出す。
「コピーコインというものがあるらしいんだ」
「こぴーこいん?」
ネコヌは聞き返す。
「青いコインの近くによると、青いコインが人をコピーするというもの」
「青いコイン?」
「悪意を持ってコピーするというものらしいよ」
「ふぅん」
「とりあえず近寄ると、ああいうものが出るから」
ああいうものとは、さっき吹っ飛ばした偽物のことだろう。
ヨーマは表面上涼しい顔をしている。
ネコヌは不安になる。
偽物と区別がつかなかったらどうなっていただろうかと。
信じられるものは、なんだろう。
「大丈夫だよ。ネコヌさんは信じたいものを信じればいいよ」
そう言って、ヨーマはいつものように不敵に笑う。