模倣のかけら
流通の賢者のイモは、反応を追っている。
セイサンの賢者の反応。
そして、まだ見ぬサンザインブルーの反応。
使うことができれば、それは頼もしい戦力となる。
だが、それがひとたび敵の、ガタリの手に落ちたら。
恐ろしいことになる。
あるいは、と、イモは思う。
新しい力を求めて、探しあがいているイモのことも、
ガタリはどこかで冷笑しながら見ているのだろうか。
イモはその想像を不快に思った。
けれど、他にできることがない。
この世を悪いほうへと転がしかねないガタリ。
悪を楽しんでいる、邪気の塊。
シッソケンヤークとは別の、悪。
正義だけの世界など、到底不可能だということは、
今までのゼニーの流れからわかる。
けれど、過剰な悪もまた、必要ないものだ。
イモにも自分の正義がある。
流通の賢者として、ゼニーの力を回す役割がある。
セイサンの賢者を、きちんと生産の賢者にしないといけない。
まだ清算の時ではない。
イモはそんな中、噂を聞いた。
いわく、コピーコイン。
人物のコピーが現れるというコイン。
そのコインは青いと聞く。
「まさか…」
イモは流れる噂を頼りに、コピーコインの残骸を見つけるにいたった。
路地で何かに吹き飛ばされ、ひしゃげた青いコイン。
イモは、コインの本質を見ようとする。
コピーコインの意思を読み取る。
姿をコピーして、悪意のままに動かそうという意思の塊。
それはマネーの力で動く、模倣のかけら。
コピーコインで動かされた模倣体が、
力を蓄えれば、マネーの力が増幅するようにできている。
コピーはマネーの力を悪に転用するようにできている。
イモは集中を解く。
間違いない、こんなことをしでかすのは、
「ガタリ、どこまでも邪魔をする気か…」
イモはつぶやき、コピーコインを砕いた。
ガタリが狙っているのは、
本物のサンザインの青いコインを見えなくする、ダミーを作ること。
イモはそう考える。
だとしたら、コピーコインは量産される恐れがある。
量産されるだけでなく、流通に乗せられる恐れがある。
マネーの力を確実にガタリ側に傾けさせる道具として、
コピーコインが使われる可能性。
ゼニーの力を回しているものにとっては、
これは癌だ。
「賢者が目覚めねば…」
ゼニーの力を回す賢者が、
正しく目覚めないといけない。
悪夢の世界を作ってはいけない。
信じるものが信じられる世界を。
イモはそう願う。