冷たい雨


雨の降る日。
ショーヤは町に出かけていた。
金のめぐりが数日前からとたんに悪くなったのを、
裏金転がしのショーヤは感じている。
きっかけはよくわからないけれど、
サンザインが活躍をする前、シッソケンヤークというのが悪だった頃、
そのときの流れの停滞によく似ている。
また、シッソケンヤークが裏で操っているのだろうか。
経済は疲弊するのだろうか。
疲弊すればするほど、裏金はよく転がる。
ショーヤにとってはうれしいことでもあり、悲しいことでもある。
「どうせ、だよなぁ」
どうせ、利益を得るのはいつだって特権階級。
ショーヤにはそれが好ましいことではない。
雨の町の雰囲気の暗さは、
決して、雨が降っているからだけではない。
いろいろな暗い要因が、
冷たい雨になっている。

ショーヤは路地を歩く。
傘に落ちる雨は、ぼたぼたと。
暗く人通りの少ないそこで、ショーヤは不思議な人を見つけた。
多分、女性。
傘もささずに、大きなネジが頭にある。
小柄なその人は、雨の中立ち尽くしている。
ショーヤは声をかけようか迷って、
ナンパと勘違いされないだろうかと悩んで、
「どうしたんですか?」
と、少しばかり硬い言葉をかける。
女性はショーヤに気がつくと、
「人を探しているんです。質素倹約が好きで赤い髪の人」
ショーヤの情報網には、当然そんな人も引っかかっている。
シッソケンヤーク、間違いなくそいつを探していることはわかる。
ただ、この人は一体何者なのか。
「あなたは?」
「ネジといいます」
「俺はショーヤ。何で人探しを?」
「あの人は、ネジの半分だったから、いなくなって、つらいから」
断片的にネジは言葉をつむぎ、
くしゅんとくしゃみをする。
よく見れば、ネジはだいぶ雨まみれになっている。
この分だと、倒れるまで人探しをする気だったに違いない。
ショーヤは心でやれやれと思う。
「とりあえず、風邪引きますよ?」
「へいき」
「平気じゃなくて、うーん…」
ショーヤは考え込んだ挙句、
「まず、どこかであたたかくなったほうがいいですよ」
「そうなの?」
「服乾かして風呂入って、晴れた日にまた探せばいいでしょう」
ショーヤはネジの髪をわしゃわしゃとなでる。
だいぶびしょびしょとなって、冷たい。
嫌な予感がして額に手を当てると、こっちは熱い。
一刻を争う人探しなのかもしれないが、
ネジの体調のほうがやばいとショーヤは判断する。

連れて帰るか、あるいは、ネジを家まで送り届けるか。
ショーヤは悩み、ネジはぼんやりしている。
冷たい雨が、降っている。


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