交差する


郵便屋は走る。
路地の入り組んだこの町を。
郵便屋は時々記憶が途切れている。
記憶が途切れると、なぐりがきの手紙が郵便屋の鞄に入っている。
一体誰がと郵便屋は思う。
ムダヅカイン。
聞いたことがあるようなないような名前。
一体誰だろう。
郵便屋もムダヅカイは好きだが、
一体ムダヅカインというその人は、
郵便屋の記憶が途切れているとき、何をしてるのだろうかと思う。
考える前に郵便屋は走る。
ヒーローにファンレターを届けに。
悪のシッソケンヤークをやっつけるという、
ヒーロー達に宛てたファンレターを届けに。

チンは町を歩いていた。
チンには自分がやるべきものがよくわからない。
でも、最近覚えた楽しいことがある。
それは、物を作るということ。
ハルカをはじめ、親切な町の住人が、教えてくれたりしていて、
チンは物作りの楽しさをかみ締める。
この物作りという楽しいことが、
チンのやるべきことだったら、うれしいなと思う。
何のために生まれたのか。
どこかのパン頭のヒーローではないけれど、
誰かのために何かを作るために生まれたなら、
それはチンにとってうれしいと思う。

イモは空を行く。
突風に乗り、町を行く。
シッソケンヤークが経済の流れを止め、
コピーコインの流通を一時的に止めている。
流通の賢者として、喜ぶべきかそうでないのか。
ゼニーの力の流れ、マネーの力の流れ、
まとめて経済の流れを停滞させている。
長くは続かない。
今のうちに、賢者の覚醒を、
そして、悪意の塊のガタリを倒さないといけない。
世界の流れを、生産・流通・消費の円環の中に流さないといけない。

三者は町を行き、
ある一点で交差する。
彼らは気がつかない。
互いがどれだけ重要な存在かということに。
気配くらいは感じたかもしれない。
それでも、彼らは何事もなかったようにその場から去っていく。
賢者はまだ気がつかない。

経済の停滞。
まだ目覚めていない賢者。
金の流れでできた龍の衰弱。
過剰な質素倹約が美徳とされる風潮。
世界は流れる。
あまりよくない方向に。

「こうあるべき」があちこちで錯綜する。
人々は、情報に踊らされ、
あるべき自分を見失いそうになる。
これを導く賢いものはいないのか。
戦うべきものは何なのか。
ムダヅカインのように、その身をもってして正義の流れを作ったような、
そんな賢者はもういないのか。

みんな待っている。
流れを導く存在を待っている。


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