道の果て
たとえ世界が終わっても、
自分は道の果てを見ることはないだろう。
リュウジはそう思う。
志半ばという意味でなく、
ただ、道の果てを、未知の果てを、
見ることはないだろう。
「俺は果てを見ることはないだろうな」
リュウジは一人つぶやく。
世の中質素倹約の間違ったのとか、
経済がどうにも停滞しているとか、
コピーして回る悪魔のコインだとか、
めくらめっぽうに話が広がっているようで、
それでいてひどく規模が小さい。
話としての底が浅い。
この程度なら、サンザインとかでも十分どうにかなるか。
リュウジの見ることのできない果ては、
形に収まろうとしているヒーロー達の物語のもっと先。
ちゃんと終わる物語のもっと先。
きっと、物語が終わったその先に、
リュウジの目指す「果て」の尻尾があるかもしれない。
求める道の果て、そのかすかなにおいでも、
リュウジはつかみたいと思った。
道を切り拓き。
誰も知らない場所のにおいをかいだ。
未知は優しいばかりでない。
痛い目もだいぶ見た。
それでも、知らないことを知りたいと思い、
学び続けたいと願い、
その欲求には、乾きがないことを、思い知る。
泉のように沸き出でる欲求。
その流れは果てを目指して龍のように。
武術だけにとどまらない、生き様。
この生き様をたどって真似するやつはいないと思うけれど、
真似もほどほどにしとけとリュウジは思う。
道を究めた生き方じゃないし、
もっといろいろ見て人生考えろ。と、リュウジは思う。
きっと物語は、終わるためにある。
どう終わるかはともかく、終わる。
物語がばらばらになっても、
物語ってのは、終わるためにある。
途中では見えなかったものが、終わると見えてくるものだ。
何が大切だったのか、
何が重要な言葉だったのか。
どこに着地すればいいのか。
サンザインとやらの物語は、まだ途中で、
やつらはやつらなりに戦っていて、
まぁ適当にがんばれとは思う。
どうにかなるさ。
この小さな世界で、一生懸命になっているヒーロー。
悪役が意地悪しなければどうにかなる。
俺なら…と、リュウジは考えそうになって、苦笑いする。
どうにも、自分が悪役だったらどうすると考えてしまう。
この道の果て。
世界が終わっても、見ることのない果てを思い描く。
そこにたどり着くときがあるとすれば、
それはどういうときだろう。
悪も正義も超越しているかもしれない場所。
道の果てをリュウジは思う。