守護者


超級風水師のギエンは町を歩く。
龍脈が日に日に弱っているのを感じる。
それは、金の力が宿っていたおかしな龍脈。
小さな大きな経済の流れが作っていた、
人の金銭のつながりと信頼が作っていたという、
奇妙な龍脈のようなもの。
便宜上ギエンには、その流れは龍のように見える。
町を流れる龍の姿。
それは少しばかり前から、弱ってきていて、
あちこち青いコインが病魔のように巣食っている。
噂は聞く。悪魔のコインと。
近づくものを、コイン自身を、コピーして増殖する、
思考がないくせに悪意がある。
邪気の塊と思えばいいだろう。

ギエンは小さな物音を聞いた気がした。
鬼律退治をしていると、物音に敏感になっていけない。
町の少しの違いにも敏感になるものだから、
町を見回るプログラムではないかと、冗談を言われたこともあった。
ギエンは否定も肯定もしない。
かすかに、再び物音。
二度あれば何かあるのだろう。
ギエンは入り組んだ路地を、庭かなにかのように歩く。

路地の片隅に、
ふるぼけたおもちゃがあった。
それは、昔テレビで流れていたかもしれない、
正義のロボットか何かのおもちゃで、
スイッチが壊れているらしく、接触不良気味のそこから、
ドカーンとか、キュピーンとか、
正義のロボの必殺技の音がする。
この町の、どうにもよどんだこの状態で、
このおもちゃが鬼律とならなかったのは、なぜかとギエンは考えて、
それはこのロボットが正義というものを持っているから。
そう考えて、苦笑いをする。
子供みたいな考えだと。

ギエンは正義のヒーローではない。
一人の超級風水師に過ぎない。
龍脈を正すのが使命だ。
巨悪をやっつけたり、ヒロインを助けたり、世界を平和にしたり、
そういうのは、ギエンには縁のないものだ。
縁のないそれらが、
このロボットの出てきたアニメでは、全部てんこ盛りだったような。
伝え聞いただけかもしれない。
ご都合主義という言葉の前の、
ロボットアニメの開拓地を行っていたかもしれないもの。
超級風水師としてではないギエンの、
記憶をくすぐられるような感じ。

「ふむ」
ギエンは少し考え、
ロボットのおもちゃを、また、路地に戻す。
邪魔にならない片隅に、立たせる。
正義のロボットは、邪気になんか負けない。
鬼律になったのならば、ちゃんと始末をするけれど、
ヒーローがこの町に平和をもたらすまでは、
そして、ギエンの宿敵にケリをつけるまでは。
この路地の守護者は、このロボット。

必殺技の音が、調子外れに。
ギエンはまた町を行く。


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