ゼニーの龍


「相変わらずめちゃくちゃだ」
町の屋上、シッソケンヤークはつぶやく。
傍らにグリフォンとヨーマ少年、サンザインダークのネコヌ。
「龍のいましめを、ぎりぎりで解いたはいいが…」
シッソケンヤークは意図的に経済の流れを止めていた。
三賢者がそろったそのときに、
経済の龍を開放していた。
だから、膨大な力が開放されたのではあるが、
気がつくものだけ気がついていればいいと、シッソケンヤークは思う。
しかし。
「これで終わりませんよね」
ヨーマ少年がつぶやく。
シッソケンヤークはうなずく。
「経済の龍は弱っている。ガタリはまだ出てこない。それに」
「それに?」
列挙するシッソケンヤークに、グリフォンが訊ねる。
シッソケンヤークは口元を笑みにする。
「特撮のお約束、巨大ロボがまだじゃないか」
グリフォンは目をまん丸にする。
冗談なのか?今のはもしかして冗談なのか?
シッソケンヤークは受けなかった冗談をおさめて、咳払いを一つ。
「とにかく、だ。このままでは終わらんだろうな」
シッソケンヤークの赤い前髪が揺れる。

経済の龍は、ゼニーもマネーもひっくるめた、世界を巻き込む大きな龍。
姿をとったものが、この、ゼニーの龍だと思って差し支えない。
具現化をするには大きな力が必要だ。
爆発的なゼニーの力が。
三賢者が、ゼニーの力をうまく回せるのならば、
この正義に勝ち目はあるはずと思う。
だが、今ここに姿を現した龍は、
何かが欠けているような感覚を覚える。
やはり、サンザインブルーが欠けたままでは、
そして、それが敵に回ったのは手痛いか。
シッソケンヤークは判断する。

量産型の青いサンザインが消え、
避難して戸を閉めていた、町の住人が通りに出てくる。
まだ不安は消えない。
恐る恐るといった風で、路地から通りへ、
そして、ヒーロー達のいる大通りへ。
龍は彼らを迎える。
お祭りのお約束の見世物のように。

龍は雄たけびを上げる。
高く長く強く。
そして、具現化した龍はだんだん消えていく。
それはまた、町にとけていくかのように。
「経済はまた回せばいい。この龍も復活することもある」
シッソケンヤークはつぶやく。
「でも、この今、ゼニーの龍は消えた。ここをせめられたら辛いぞ」
三賢者がいるのなら、ゼニーの力はまた回るだろうし、
いずれまともな流れが世界の経済の龍になる。
しかしそれは、いずれ、の、話だ。
問題は今。
ゼニーの龍は消えた。


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