あらわれる


黒い悪の炎は、清算の賢者を取り込み、姿をとる。
それは大きな顔として。
ニヤニヤ笑いが張り付いた、どこか道化のような顔。
『また会えたね、諸君』
声はあの時聞いた、ガタリその声だ。
『戦いは楽しかったかな?』
『たまには英雄になるのも悪くはないだろう』
『それでも、君達の力で私を止めることはできない』
『生産のないことは、とてもとても悲しいことだ』
『悲しみの果てで、君達は力のなさを痛感するだろう』
ガタリは得意げに語る。
その黒い顔はとても楽しそうに。

『龍もいないところで、君達はどうやって巨悪を倒すのかな?』
『散財し続ければ、ハサーンが待っているよ』
『さてさてどうするのかな』
ガタリは語る。
愉快そうに。

「挑発か、ガタリよ」
『そう、安い挑発だよ、ムダヅカイン』
「わしはむしゃくしゃしてしょうがないところだ」
『それはよかった、そういうのが大好きだ』
「殴れるのならば拳骨で殴りたいところだ」
『殴れるものかい?意識体のガタリを』
「殴りたいものだな、ぼこぼこにな!」
『悔しそうな君たちが一望できるね、最高の気分だ』
ガタリは笑う、高らかに。

ムダヅカインは、ガタリの元へ走らんとする。
何か一撃をと考えたのかもしれない。
それを止めたのは、サンザインのホワイトだった。
「あいつの言うとおり、安い挑発です」
「しかしじゃな…」
「あっちでもレッドがブラックに止められてます。どっちがリーダーだか」
ホワイトは微笑み、ムダヅカインは少し正気を取り戻す。
この物語は終わらせるためにある。
ならば、ムダヅカインのすべきことは何か。
ムダヅカインはため息をひとつ。
そのあと深呼吸をして、
「よく聞け!邪悪と戦うものよ!」
よく通る声が響く。
あえてサンザインといわない。
それは、ムダヅカインの決意なのか。
「破滅のハサーンはわしが引き受ける!存分に戦え!」

「ちょっと!ムダヅカインさん!」
サンザインピンクが、抗議しようとする。
ムダヅカインは破滅のハサーンを引き受けたあと、
行方不明になるという事態になっていた。
またどこかにいかれたらたまったものじゃない。
本当に消えてしまう恐れだってある。
「いいんじゃよ」
ムダヅカインは、笑う。
「でも!」
ピンクは食い下がろうとする。
サンザインブラウンが、ピンクをそっと制する。
「決めた男には何を言っても聞かないよ」
「そういうことじゃよ」

レッドが一歩前に出た。
「勝って、生きて帰るぞ!」
脳裏によぎったのは大切な人たちの笑顔。
「俺達はサンザインだ!」


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