最後のサンザイン


ムダヅカインは叫んだ。
ガタリの負けであると。
ガタリは何を言われたか理解できないようだった。
『この状況で、私の負けである、と?』
「そうじゃ、今に来るぞ」
『来る?』
ガタリは理解できない。
切り札の清算の賢者もガタリの手にあるというのに、
やつらに何ができるというのか。

町が。クーロンの町が、地が空気がふるふると震える。
皆の経済の流れの基盤を作っていた町が、
今、目覚めようとしている。
砕けたコインは町に吸収され、
町はそのコインすべての能力を覚醒させる。
誰よりも生産し散財していた町という存在が、
形を取ろうとして力を揺らしている。

町の意識は、路地裏のロボットのおもちゃに行き場を求めた。
それはギエンがあの日路地裏に見つけた、おもちゃのロボット。
壊れたおもちゃに、町のすべてのゼニーの力がこれでもかと叩き込まれる。
壊れたロボットは、ゼニーの膨大な力を宿し、輝きを宿す。
輝きの中、ロボットは大きくなる。
あたかも、おもちゃでなく、本物の正義のロボットであるかのように。
いや、それは本物の正義の巨大ロボットになっていった。

「プライスレス!サンザインクーロンじゃ!」

サンザインクーロンは覚醒する。
皆のピンチに、町が応える。

『こちらには清算の賢者が…』
「清算はできんぞ、このサンザインクーロンは、物に心が宿ったもの、只じゃからな」
『くそっ、鬼律か』
「違うぞ、ガタリ」
ムダヅカインは、笑う。
「鬼律でも妄人でもない。これはみんなが生み出したヒーローじゃ」

ガタリがはじめて動揺した。
意識体としての強さを、はかれないガタリではない。
サンザインクーロンのその力は未知数。
サンザインクーロンは、ガシャンガシャンと足音を立て、ガタリにぶつかっていく。
意識体のガタリにはじめて一撃が入る。
サンザインクーロンが、続けてガタリにパンチのラッシュを当てる。
ガタリの意識がどんどん削られていく。
『おのれぇ…』
ガタリは清算の賢者を手放した。
『負けるものか、私は…』
ガタリの意識が、霧のように晴れていく。

『私はガタリ・クールジョーク…』

最後のそのガタリの意識の塊を、
サンザインクーロンの拳骨パンチが打ち破った。

悪夢のような悪の炎が、黒い顔が消えた。
正義は勝ったのだ。


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