邪気の気配と


まだ、気の流れが、まっさらなクーロンの町。
物に邪気が取り付く鬼律なんかが町にたびたび出てくるのは、
しばらくたってからのことである。
今は、気脈がまだよどみきっていない。
よどみきるというのも、おかしな話であるが、
町を流れる気配の流れのようなもの。
金銭の流れはそれこそまだ微々たる物だし、
金銭の流れの信頼もまだ模索状態である。
人の流れも定まっていなくて、
クーロンの町は可能性をいろいろ秘めたまま、
汚れた町に流れる気脈は、まだよどみを知らなかった。

ギエンという超級風水師が現れたのは、
町ができてまもなくのことである。
町と同時に彼は現れたのかもしれないし、
クーロンが、あのクーロンがあるのならば、
超級風水師が現れるものかもしれない。
ギエンは何かにひかれてやってきたようにも見える。
引かれて、惹かれて、
どちらともわからない。

このクーロンは、コピーではない。
あのときのクーロンを真似たものではない。
たとえるなら二卵性の双子かもしれない。
クーロンという名を持った、違う双子。
双子師はいないけれど、
間違いなくクーロンであると、まっさらのこのクーロンを感じ、ギエンは思う。

ちりりと、影から気配がする。
超級風水師だから感じる類のものだろうか。
ならば、何かの気の流れか。
あるいは小さなよどみか。
邪気の生まれるところか。
この町から生じるものか、
あるいは、この町に惹かれてやってきたものか。
どっちにしろこの微々たる気配もいずれ住み着くのだろう。

古い記憶にいる、
超級風水師を翻弄した悪意のメール。
ギエンはそれを思い出す。
それから、不老不死を狙っていたらしい邪気の親玉のことなども。
このクーロンにはまだそういうやつはいない。
まだ、いないけれども、
邪がないわけではないと、感じる。
邪気ならば、見立てをおこなうならば、
超級風水師の仕事だ。
けれど、悪いやつをやっつけるかというと、
それはどちらかというと、ヒーローの仕事だ。
風水師はヒーローとは少し違うという信念をギエンは持っている。
だから、もし、悪というものが出てきたとしたら、
昔のあのメールのように気分が悪いものだったら。
「ガタリ」
あのメール主が名乗っていた名前。
古いクーロンの悪意。
このような悪意が出てきたとしたら。
倒すのはきっと、新しい力に相違ない。

コピーではないこの町。
新しいものだらけの町。
超級風水師は、町を行く。


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