ただいま修行中
チャン爺さんは修行中の術師である。
術といわれても説明しづらいのだが、
金の流れをよくする術を考え、
それを人に説いて回るようなことを修行している。
よき金の流れは、いずれこの町を成長させる。
チャンはそう信じている。
金の流れは、力になる。
それをゼニーの力と呼ぶ。
ゼニーの力は生産流通消費のサイクルの中で、
この金が信頼に値するということから生じる力。
信頼の力。
この人は、この金は、信頼できる。
それは微々たる力かもしれない。
それでも、ゼニーの力はこの世界を変えることができるかもしれない。
ひとつのコインから世界が変わるように、
一人の無駄遣いがやがて世界を変えるかもしれない。
チャンは思う。
無駄遣い。
まずはそこからはじめるべきだろうか。
子供のように無駄遣いをして散財をすることこそ、
ゼニーの力を回す最初の衝動かもしれない。
このできたばかりのクーロンに、
最初のエンジンをかけるような。
金の力をまわすには、最初の衝動がそれなりに必要だ。
無駄遣い。
必要なものと必要でないものは、
そのうち見分けがつけばいい。
散財して誰かの生産につなげる。
チャンはそうして、ゼニーの力を回そうと決意する。
まだ修行中の術師であるが、
チャンは思う。
正式な術師というわけではないけれど、
自分が納得行くような術師になれたら、
「ムダヅカイン・チャン」と名乗ろう。
そして、ゼニーの力の使いすぎによる悪いことも、
すべて引き受けられるようにしよう。
金を使う喜びと、なくなって大変だということを、
伝えられるようにしたい。
金がすべて正義につながっているわけではない。
悪い金の使い方もあるだろう。
まだ金の動きがよくないクーロンではあるが、
いずれ、ここにも金が回る。
そのときに、チャンは消費の喜びを伝えたい。
よき消費。そこからつながる生産。
クーロンならではの生産につなげることができれば、
そこからまた、よき消費が生まれる。
散財というものは、無駄遣いということは、誰かのためになっていると。
よき生産のための投資であると。
反論はいくつもあるかもしれないけれど、
どれもこれもに論破されるかもしれないけれど、
修行中のチャンは思う。
信頼のゼニーの力が、金を通して回って欲しいと。