果てない旅路
旅人がクーロンに住み着き住民となった。
旅を重ねてクーロンを探していたものが、
今、クーロンに少しずつ住み着きつつある。
それでも旅を忘れないものもいる。
アンカーはそういう旅人の一人だ。
アンカーは、あちこちの町を歩いては、
こんな風景があったと、こんなすばらしい場所があったと、
報告して聞かせている。
アンカーは世界中を歩くのだろうか。
どんな世界であっても、世界中を旅することの不可能さは、
たいていの人はわかっているし、
アンカーも多分わかっている。
でも、アンカーが旅をやめない理由は、
おそらく、『見つける』からだろう。
何かしらすばらしいものを、
何かしら美しいものを、
心に響くものを見つけるのが、
アンカーはとても長けているのかもしれない。
情報をたどって、検索をしたりして、
アンカーは旅をする。
世界中を回ろうと、意気込んでいるわけではない。
また、旅して自分を見つけようとしているわけでも、多分ない。
世界を旅して見つけるのは、いつだって世界だ。
アンカーが見つける世界は、
時々突拍子もないものであったり、
不思議なものであったり、
感心するものであったり、
どれも、そこにいってみたいと思わせるようなものであふれている。
世界は驚きに満ちている。
アンカーがクーロンの住民であっても旅を忘れられないのは、
この驚きを共有したいのかもしれない。
見つけること。
永遠に見つけ続けることなどできないけれど、
この瞬間瞬間を、見つけて伝えることはできるはず。
世界は多分有限であり、
可能性は多分無限。
だからこそ旅をしたいと思わせる。
この世界の可能性を、肌で感じたいと思う。
旅路に果てなどないさ。
クーロンの誰かが笑って言っていた気がする。
会ったことのある人だろうか。
忘れてしまった。
アンカーは思い出そうとして、それを否定して頭を振った。
クーロンに行けば会える。
会えるから、思い出さなくてもいい。
会えなかったら、それはそれまで。
風が強く吹く。
綺麗な空の下、アンカーは旅をする。
今日も旅人日和だと、そんなことを思いながら。