転機は突然に
セリはごく普通のクーロン住人だ。
物を作り、イベントが好きで、お店を持っている、
ごくごく普通のクーロン住民だ。
転機は突然訪れると、
セリも思っていなかった頃の話。
いつものクーロンいつもの路地風景。
セリは店で物を作っていた。
なんとなく、納得いかないなぁと、
作った物の出来に、疑問。
何かパワーが足りない。
ガツンとした力が欲しいなとセリは思った。
「こんなもの、いらないよな」
セリの後ろで声がする。
するのだけれど、それを認めてはいけないような気がする。
納得いかないものであっても、
これはセリの時間をかけたもので、
そのセリの時間を否定するようで怖い。
「イレイズ!」
声が、する。
物つくりをしているセリの元に、ばたばたばたっとやってくる気配。
「こちらプロト・ティー。イレイズを発見。ダブル、ケー、応援求む!」
プロト・ティーと名乗ったその人物は、セリに向き直る。
「セリさんを介する気か、イレイズ」
セリの口からセリでない声がする。
『要らないものは消すのが筋ってものだろう?』
「物つくりの情熱をなめるな!」
プロト・ティーは本気で怒っているようだ。
何がプロト・ティーをそうさせるのか。
そもそもプロト・ティーとは何者だ。
『邪魔をするな、サンザインプロト』
「いや、邪魔させてもらうね」
サンザインプロトと呼ばれた、
プロト・ティーは言葉を区切る。
「サンザインとなったからにゃ、プロトでも何でも、物の情熱を守るのが筋ってもんでしょう」
『消したいものを消すのが、イレイズの役目だ』
「消したくないものまで消すのが、許せないんだよ!」
プロト・ティーはだんっと足を踏み込む。
「散財して得たものが消えていたら、それはとてもよくないことなんだよ!」
サンザインプロト・ティーは断言する。
サンザインプロト。
セリの知らないものだ。
一体何が起きているのか。
セリの身体をのっとっているイレイズとやらに翻弄され、
セリの意識はいったん途切れる。
再び目覚めたとき、
サンザインプロトも、イレイズとやらの気配もどこにもなかった。
夢だろうか。
サンザイン。
散財を肯定するであろう人たち。
パワーが足りないなとセリは感じる。
セリ自身、あのヒーローに負けないパワーが欲しい。
転機は突然訪れる。
夢か現実かは置いといて。