夢のような悪夢のような
クールという人物がいる。
夢にまで見たこのクーロンの町を、
こよなく愛している人物だ。
夢にクーロンを見るということは。
それは悪夢なのだろうか。
汚れた町と、夢特有のゆがみ。
こんな町があったら。
クーロンの町があったら。
あったら、歓喜するだろう。
それが多分クールの思いだ。
そして今、クーロンの町は姿を現し、
クールはたまにクーロンの町を歩く。
ああ、この路地を夢で見た。
ここに、奇妙なものがあって…そうそう、こんなもの。
夢のゆがみも、歩きにくさもそのままに、
この世界にクーロンがある。
他の人がこの夢を見たならば、
それは理解しがたい悪夢にしかならないだろう。
クールの夢そのまま、それ以上に、
クーロンの町はそれこそ夢の町としてそこにある。
クールは、クーロンの路地でたたずむ。
まだ生まれて間もないクーロンではあるけれど、
これは本当に現実なのか。
クールの見ている夢の続きではないだろうか。
クールはクーロンに関しては夢と現実の区別がつきかねている。
なんというか、外部になった夢という感じすらしている。
どこまでがクールの中の夢だったのか。
どこからがクールの外の現実であり、クーロンなのか。
クールの内部と外部の境目でクーロンが存在しているような。
夢がクーロンを通して現実になりかねない、奇妙な感覚。
クールはあまり不安は持っていないが、
クーロンという町ならば、そういうことを起こしかねないと思っている。
なんといっても、クーロンだから。
クールがたたずむその近くを、
クールの見たことのないヒーローっぽいものが駆け抜けていく。
クールはそれを見送って、
はて、あれはどういうものなのかなと思う。
当たり前だけど外部には他の人がいて、
他の人が駆け抜けていくことだってある。
駆け抜けていったそのヒーローを、
クールはまだ知らない。
クールの内側にそのヒーローはまだいない。
ああ、クールの夢だけではないんだと、
そんなことをクールは思う。
夢にまで見たこのクーロンは、
クールの他の人も当然いて、
みんなで影響しあっていて予想以上に混沌なんだ。
「すばらしいね」
クールは夢現の境の町で、そんなことをつぶやく。