趣味のカフェから


ジュンコはカフェを営んでいる。
緑のまぶしい草原の中、ポツリとジュンコのカフェはある。
ジュンコが気が向いたときに営業をする、
本当に趣味のカフェだ。

ジュンコはクーロンの住民とも交流があるし、
クーロンの町に愛着も持っている。
いずれクーロンでカフェが出来たらいいけれど、
とりあえずはこの原っぱから。
なりは小さくても、心まで小さくなっていちゃいけない。
趣味ではあるけれど、手を抜いてはいない。
カフェはそういうジュンコの気持ちを代弁するように、
小さくてもしっかりしたつくりである。

趣味でカフェを営み、
趣味の話をする。
ゆるゆると楽しい時間を作ること。
それは多分クーロンの町にも通じるだろう。
人が集まるというのは、
外側をどんなに作ってもだめだ。
人は空気の匂いをかいでやってくる。
雰囲気というならそうだろうけれど、
会話で発した言葉の名残や、
笑い声の残り香や、
そういった匂いを、嗅ぎ分けて人はやってくる。
ジュンコのカフェが趣味であってもゆるゆる続くように、
気負い過ぎない雰囲気は、お客を安心させる匂いにもつながっている。

クーロンの町には、
趣味でいろんなことをしている人が山ほどいると言う。
原っぱのカフェでジュンコは物思いにふける。
クーロンの匂いを、時々無性に嗅ぎたくなる。
趣味でいろんなことをしている連中の、
個性的な店、町並み。
クーロンの町が出来てから、あまり日がたっていないのに、
どうだろう、あの、町の存在感と、
魅力的なあの匂いは。
物を作って売ろうという情熱かもしれないし、
それとは違った、クーロン住民になりたいという、これまた情熱かもしれない。
静かに鍋が煮えたぎるような熱さと表現すればいいのか。
わからないけれど、癖になる匂いをクーロンの町はもう持っていると、ジュンコは思う。

おだやかにゆるやかに。
それでも折れないしなやかさ。
なにかを続けていくというのは、
そういうやり方がいいのかもしれない。
趣味で、でも、情熱を持って。
真剣だけど肩の力を抜いて。
飽きたらやめればいいさと。

趣味のカフェは原っぱに。
緑の風が吹き抜けるそこにある。


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