空色銀色


クーロンの空はいつでも暗く、
時が本当に過ぎているのかを疑う。
スカイシルバーという名を持った住民は、
それでも時が過ぎていることを感じる。
誰かが時を守っているのだろう。
見たことある誰かかもしれないし、
もしかしたら話をしているかもしれない。
まぁ、この町がこの町であり続ければそれでいい。
スカイシルバー、通称ギンと呼ばれる住民はそう思う。

邪気の宿った骨には雲母がびっしりたまると、
そんなことを昔どこかで聞いた気がする。
古いどこかのクーロンだろうか。
狂った悪ふざけのような世界のクーロンだった。
それでいて大真面目だったから始末に終えない。
ギンはそんな世界が大好きだったのだから、
この町の住民も含めて、大体始末に終えない。
いいじゃないか。そういう始末の終えなさも。

ギンは空を見上げる。
暗い暗いクーロンの空。
ギンはその空を、銀色の炸裂した空だと思う。
小さな銀色が大きな暗い色に炸裂している。
もっと炸裂させたら、
考えたが、空が破れて落ちてきそうだと思った。
それはギンの望むところではないし、
空を落とすのは不本意だ。
だから、妄想の中でも、空は落とさない。
ただ、小さな銀色を炸裂させる。

空ばかり見上げていて、
すれ違うその人には気がつかなかった。
急いで走っているようで、
走りながら連絡を取っていた。
ギンはその人の声を知っているようであったが、
はて、誰だったかな。
あんな格好しているのは誰かな。
記憶をたどってみたけれど、
どうも完全に一致する人がいない。

あるいは。ギンは思う。
悪ふざけの好きな、クーロンの町自身のイベントなのだろうか。
作り手が作ったのでなく、
住民が作ったのではなく、
クーロンの町自身がひねり出したイベント。
気がつく人もわずかの、
クーロンの町が生み出したイベント。
そんなことあるわけないと言うのは簡単だ。
でも、クーロンだからありうる。
ありうると思うあたり、ギンもだいぶクーロンに毒されているなと思う。
この毒はくらくらと気持ちがいい。

はりついたような空を、ギンは見上げる。
クーロンというビルの塊のような町で、
可能性の塊の町で、
空まで届くだろうかと考える。
張り付いた空にギンの銀色を炸裂させる。
きらきらした妄想。
そういうのも悪くない。


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