術師とコイン


イレイズとのいたちごっこの続く日々。
そもそもイレイズは単体なのだろうか。
誰かの元に現れては、物を消すことをそそのかし、
あるいは、黙って物を消して、どこかに消える。
そんなのがいっぱいいたならば、
サンザイン・プロトが3人であっても追いつかない。
イレイズは馬鹿にしているのか。
それとも、イレイズの能力の限界なのか。
わからない。
けれど、サンザイン・プロトは物を消されることをよしとしない。
ならばイレイズは敵だ。
物がないほうが身軽かもしれない。
物が増えるのは恐ろしいことかもしれない。
それでも、サンザイン・プロトは、物の情熱を信じる。
この情熱が、世界をあたためている、と。

ある日あるとき。
サンザイン・プロトは、また、イレイズを追い払った。
変身を解き、一時的に日常に帰ろうとする。
プロト・ケーはカクザへと戻り、
さて、ラッキーボードでも見に行くかなとも考える。
背伸びを、うん、と。
その手からコインがこぼれる。
「あれ」
盗むものなどあまりいないクーロンの町で、危機的状況ではないが、
うっかりしていたなぁとは思う。
コインは少し転がり、
誰かの足元で止まる。
コインにばかり目がいっていた、カクザはおやと思って目を上げる。

確かこの人はチャンおじいさん。
カクザの記憶は一致をする。
チャンはコインを拾うと、じっと見つめ、
「これは君のものかな」
と、訊ねる。
カクザはうなずく。
「少しばかり見てもいいかな。盗みはしない」
「はい」
疑ってかかってもしょうがない。
チャンはコインをしげしげと見つめたり、握って何かを感じたりしているらしい。
「そうか…そうか…」
チャンはコインから何かを感じ取っているようだ。
カクザにも感じ取れないものだろうか。
あるいは、カクザたちが聞いているコインの声を聞いているのだろうか。
チャンは一通り何かを感じ取って、
「ありがとう」
と、言い、カクザにコインを返す。

「このコインは、まだ未熟なコインだ」
チャンは言う。
「戦い続けていれば、いつかは砕けてしまうだろう」
カクザはコインを握り締める。
いつかヒーローが終わるとき。
ヒーローが終わってもいいけれど、
イレイズをやっつけてみんなを安心させないと。
チャンは、そんなカクザの心境を察したらしい。
「大丈夫。君たちなら出来る」
チャンは笑う。

「ムダヅカイン・チャンが保障する」
術師ムダヅカイン・チャンはそういった。


次へ

前へ

インデックスへ戻る