コインのリミット
それは、イレイズを追い払う日々が続いたある日のこと。
サンザインプロトの三人は、
いつものように住民に執拗に取り付くイレイズを追い払い、
やれやれと変身を解こうとしているところだった。
(聞こえるか、サンザインプロト)
声が、した。
いつか聞いた声、この声は、散財の言葉を教えてくれたコインだ。
(このコインの力は、そろそろ限界になろうとしている)
声に彼らは目を見開く。
いつか限界が来るとは聞いていたけれども。
(だが、イレイズも力を失ってきている。今までの戦いは無駄ではない)
彼らは視線を交わし、うなずく。
手ごたえはある。
ただ、コインの力もイレイズも限界が近い。
決着をつけるときが近いらしい。
(戦えるか、サンザインプロト)
コインは問いかける。
(このコインは有限の力しかない。君たちが拾ったのは偶然に過ぎない)
(イレイズに敗北すれば、君たちの未来も保障できない)
(それでも戦えるか?)
サンザインプロトの三人は、コインを握る。
カクザは思う。
コインが言う偶然で、クーロンの町は絆が出来て、
そして、カクザはともに戦う仲間が出来た。
期限付きの仲間だというのだろうか。
そんなことはない。
未来も、ずっと、仲間だ。
最高の、仲間だ。
このコインは、最高の幸運をもたらしてくれた、と。
チマは思う。
物つくりの情熱を否定するやつに、
物をどうこうする資格はない。
こっちもリミットがあるのなら、
なりふり構わず戦うだけ。
消されてなるものか。
ちっぽけなこの爪だって、情熱が詰まっているのだから。
物つくりの情熱をなめるなといいたい。
ワンレンは思う。
物の重みは思いの重み。
思いの強さがあるのだとしたら、
それは、仲間がいるということ。
正義を信じて戦う、仲間がいるということ。
消されてたまるかという気持ちだけでない、
何かを守りたいという気持ち。
誰の心にもある、一番透明で熱い正義。
コインは語りかける。
(思いの重み、しかと受け取った)
(この身が塵にかえるまで、サンザインプロト、君たちとともにあらん)
(ともに倒そう、得体の知れない暗い不安を)
決戦のときは近い。