機械仕掛けのイレイズ
決戦の日はやってくる。
イレイズもあとがない。
無駄に住民をそそのかして物を消すには、
イレイズは消耗をしているのだろう。
同じことはサンザインプロトにも言える。
イレイズと戦ったり、
イレイズのとりついた人物を正気に戻したり、
そういったことは、消耗するばかりだ。
数日、不気味なほどの静けさが、クーロンの町を覆った。
住民は息を潜める。
何かが起ころうとしている。
クーロンの町の命運を賭けた何かが。
静けさの中、風が吹きぬけていき、
人の少ない路地をなでていく。
決戦の日はやってくる。
それは暗いクーロンに騒々しい機械音を伴って。
(広場だ。そこに奴はいる)
コインが語りかける。
彼らは走る。
「散財!」
走りながら、宣言をして変身をする。
駆け抜ける一陣の光は、サンザインプロトの姿をとる。
最後の力を賭けるのは、
多分どちらも一緒だ。
強いほうが勝つ、わかりやすくていい。
そして、サンザインプロトは、
物が消えていく世界を望まない。
物が勝手に消えていって、それをしょうがないと思う世界を望まない。
ならば、全力で倒すまで。
この情熱尽きるまで。
サンザインプロトたちが駆けつけた広場には、
がらくたの山、と、機械の人型。
『結局、世の中がらくただらけじゃないか』
いつも追ってきた声は、機械の人型から。
『がらくたを整頓するのも必要だ。だからイレイズとして物を消す』
人型は騒々しい機械音を鳴らす。
『がらくたは世界の負荷なんだ。どうしてわからない』
「がらくたを、いらないとするならば」
プロト・ケーが一歩前に出る。
「どうしてあなたは今、がらくたの姿なのですか?」
プロト・ケーは訊ねる。
機械仕掛けのイレイズに、表情はないけれど、
多分あるとしたならば笑ったのだろう。
プロト・ケーはそう思った。
『世界の邪魔者になった気分はあるかい?』
イレイズはぽつりと言う。
『存在が事故だと思われたことがないんだろう』
プロト・ケーは、なんだか悲しみをそこに感じた。
『あんたら正義の味方がいるってのは、俺にとってもラッキーだ』
『俺は意味を見つけて消えられるってもんだ!』
がらくたの山が、ぶんぶんと襲い掛かってくる。
サンザインプロトは、がらくたをよけながら、
イレイズに肉薄する。
拳を繰り出す、
蹴りを鋭く。
負けられない戦いが始まる。