約束


情熱のビックバンが炸裂する。
物を作り出すものの情熱、
物を手に入れるための情熱。
あらゆるクーロンの情熱が大きな力を呼ぶ。
情熱からすべては始まる。
ここから、始まるのだ。

永遠のような一瞬。
暴れる大爆発の中、
耳をつんざくような音と、
目もくらむような閃光。
その一瞬は、時間すら歪んでいたのかもしれない。

サンザインプロトだった彼らは、
空白の場所にいた。
あたり一面真っ白で、何もない。
そこに、がらくたの姿をとったイレイズがいる。
『負けたよ』
イレイズは言う、むしろすがすがしく。
『これほど物に重みと思いが詰まっているなんて、思ってなかった』
イレイズは肩をすくめる。

『負けるべくして負けたんだろう。意味のないバグが勝てるわけないんだ』
「いや、意味はないわけじゃない」
ワンレンが言う。
「君は悪役だ。そこに意味はある」
イレイズは虚をつかれたように黙り、
『よかった』
と、つぶやいた。

「結構あんた楽しかったよ」
チマが笑う。
「迷惑かけまくってたけどね。それだから、こっちはヒーローになれたんだよ」
『そうでもないさ』
イレイズは答える。
『ヒーローの素質は十分だった。だからこうして悪を倒せたんだ』
多分イレイズは微笑んでいる。

「あの」
カクザが遠慮がちに声をかける。
「あなたは消えてしまうのですか?」
イレイズはうなずく。
『思うところいろいろあるさ、でも、限界なんだ』
カクザもわかっている。
わかっているから、カクザは言いたいことがある。
イレイズの気配が消えていく。
言わなくちゃ、この時に言わなくちゃ。
「イレイズさん」
イレイズのがらくたがこっちを見た気がする。
それすらも消えていく。
「この町を、クーロンを、悪者に負けない町にしますから」
イレイズの気配がくすっと笑った気がした。
「だから、だから、また」
また、戦いましょうなのか、
また、会いましょうなのか、
また、何なのか。
言葉に出来なかった約束。

時間が戻ってくる。

彼らは広場にいた。
イレイズのがらくたはもうない。
耳鳴りと多少の熱を残して、悪役は退場した。


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