君は「ピエロット」という店に入っていった。
ドアを開けると、入店を知らせる小さな鐘がカランカランとなった。
喫茶店らしい。テーブル席がいくつかと、カウンターがあり、
カウンターには、旧式のコーヒー豆挽きの道具がちょこんと置いてあった。
店内にはオルゴールの音楽が静かに流れ、どことなく、街から切り離されたような空間を作っていた。
「ピエロット」という名前の由来はすぐにわかった。
壁にはピエロの仮面や絵が並び、
ディスプレイ用の棚には、ピエロの置物、人形、が並んでいた。
「いらっしゃいませ」
と、声をかけてきた店員も、ピエロの仮面をしていた。
オルゴールの音色に混じって、古風なギターの音色が聞こえた。
「あまり呆気に取られなさんな。この街じゃここはまともな方なんだぜ…」
そういう男はテーブル席でギターを構え、長い前髪で見えない目で君を見ていた。
「きな、まともな話でもしようや…」
君は男と同じテーブル席についた。
「そうか…この街に流れ着いた電網系ってのはあんたの事か…」
君は頷いた。
「妄想テープの事、だろ?あんたが聞きたいのは?違うか?」
否定してもしょうがないので、君は肯定した。
「一杯おごってくれや。ありからしいという情報は得ているんだ…どうだ?」
さて、どうしようか?
苦いコーヒーを一杯おごる
アイスココアをおごる
おごってあげない